この度、木島敏樹先生が筆頭著者として執筆した論文が、泌尿器科領域の国際的な学術誌であるInternational Journal of Urology誌に掲載されました。
論文の概要
タイトル: Tertiary Lymphoid Structures Correlate With Better Prognosis in Patients With Retroperitoneal Sarcoma: A Retrospective Study
(後腹膜肉腫患者における三次リンパ様構造と良好な予後との関連:後ろ向き研究)
掲載誌: International Journal of Urology
研究の背景
後腹膜肉腫は、お腹の奥深くにある後腹膜という部位に発生する悪性腫瘍で、診断や治療が困難な疾患の一つです。近年、がんの治療において免疫療法が注目されていますが、後腹膜肉腫における免疫微小環境の役割については十分に解明されていませんでした。
本研究では、腫瘍の中に形成される「三次リンパ様構造(TLS)」という免疫に関わる特殊な構造に着目し、患者さんの予後との関連を詳しく調べました。
研究方法と対象
2007年から2021年までの15年間に獨協医科大学病院で手術を受けた後腹膜肉腫患者さん29例を対象に、免疫組織化学染色という特殊な染色方法を用いて、腫瘍内の三次リンパ様構造と腫瘍浸潤リンパ球を詳細に評価しました。
主な結果
研究の結果、以下のことが明らかになりました:
- 三次リンパ様構造の存在: 全体の59%の患者さんで腫瘍内に三次リンパ様構造が認められました
- 生存期間の延長: 三次リンパ様構造が認められた患者さんでは、認められなかった患者さんと比較して、有意に生存期間が延長していました
- 免疫反応の活性化: 三次リンパ様構造の密度が高い患者さんほど、がんと戦うCD8陽性T細胞の浸潤が多く認められ、より強い免疫反応が起こっていることが判明しました
- 病型による違い: 特に脱分化脂肪肉腫という病型において、この傾向が顕著に認められました
臨床的意義
この研究成果は、後腹膜肉腫における新たな予後因子の発見として大変重要な意味を持ちます。三次リンパ様構造の存在が良好な予後と関連することが示されたことで、将来的には以下のような応用が期待されます:
- 治療方針の決定における新たな指標
- 免疫療法の適応判断への活用
- 患者さんの予後予測の精度向上
また、腫瘍の免疫微小環境の重要性を改めて示した研究として、がん免疫学の分野においても注目される成果です。
最後に
本研究は、獨協医科大学病理診断科の大和田温子先生、石田和之教授との密接な共同研究により実現いたしました。病理診断の専門的な知見と高度な免疫組織化学的解析技術なくしては、このような詳細な研究は不可能でした。両先生のご協力とご指導に心より感謝申し上げます。
木島敏樹先生、論文掲載おめでとうございます。この研究成果が、後腹膜肉腫の診療向上と患者さんの予後改善につながることを期待しております。