浸潤性膀胱癌に対する膀胱温存療法
最大限の経尿道的切除、化学療法、放射線療法:3者併用療法
最大限の経尿道的切除、化学療法、放射線療法+膀胱部分切除術:4者併用療法
筋層浸潤のある膀胱がんの標準治療は膀胱全摘除です。膀胱全摘除は根治性の高い確立した治療法ではありますが、手術の侵襲が比較的高いため、ご高齢の方や併存疾患の多い方では施行困難な場合も時にあります。
また、膀胱全摘除後は、新たな尿の排出法として、回腸導管や回腸新膀胱といった尿路変向手術を同時に施行する必要があります。いずれの方法を選択したとしても、尿路変向は術後の生活の質(QOL)を大きく低下させます。
これらの課題に対応するために、膀胱全摘除術以外の方法で、膀胱がんの根治を目指す膀胱温存療法が試みられてきました。
これまでの研究から、化学療法、放射線療法いずれも、単独では十分にがんの再発を抑えられないことが知られており、現在、膀胱温存療法を行う場合には複数の治療法を組み合わせる事が必須と考えられています。
当科では、最大限の経尿道的切除、化学療法、放射線療法を組み合わせた3者併用療法、さらに治療の仕上げとして膀胱部分切除術を行う4者併用療法を施行しています。
3者併用療法、4者併用療法いずれの場合も、まず治療の第1段階として、腫瘍量をできるだけ減らすために経尿道的膀胱腫瘍切除術を行います。
さらに化学療法と放射線療法を同時に施行します。
併存疾患などにより全身麻酔下手術が困難な状況であれば、この段階で治療を一旦終了します。(3者併用療法)
化学放射線療法の治療効果が良好であり、かつ手術が施行可能な状況であれば、再発率をさらに低下させるために、膀胱部分切除術+骨盤リンパ節郭清術を施行します。(4者併用療法)
膀胱温存療法により良好な長期成績を得るためには、診断時の腫瘍の大きさがある程度限局していることや、上皮内がんの併発がないことなど、いくつかの条件があります。
従って、全ての患者さんにお勧め出来るわけでは無く、患者さんの状況によっては膀胱全摘除をお勧めすることも多々あります。
それぞれの患者さんに合わせた治療方針を検討し、提案させていただきますので、主治医によくご相談ください。