最大限の腎機能温存を目的とした無阻血腎部分切除術
比較的小さな(目安としては直径4cm以下のもの)腎がんに対しては、腫瘍のみを摘出し正常部位を温存する腎部分切除が標準治療となっています。腎部分切除は根治的腎摘除と比較して、がんの根治性は同等である一方、健常腎実質が温存されるため術後の腎機能を保つ点で優れています。
一般的には、腎部分切除を行う際には、腎血流を遮断して腫瘍を切除し,切除部を縫合閉鎖しますが、腎動脈の阻血に伴う腎機能低下や、血流再開に伴う高出血(仮性動脈瘤)のリスクなどが課題となっています。
当科では、マイクロ波組織凝固装置やソフト凝固といった手術デバイスを用いて、腎動脈を阻血することなく、腎部分切除を施行しています。手術中に、切除面の完全な止血を確認できるため後出血のリスクが少なく、かつ術後の腎機能も良好に保たれています。
無阻血腎部分切除術は、腫瘍の位置や大きさにより、腹腔鏡下手術、腹腔鏡下小切開手術、ロボット支援手術のいずれかで施行しております。
大きな腎がんや、腎臓内に完全に埋没した腫瘍の場合、無阻血腎部分切除は施行できないことがあります。その場合、従来の阻血法にて腎部分切除を施行します。患者さんそれぞれの状況に応じて、最適な手術法を提案させていただきますので、主治医とよくご相談ください。