古藤野茉莉子先生の症例報告、“Increased expression of ATP-binding cassette transporters in enfortumab vedotin-resistant urothelial cancer”がIJU case reports誌に掲載されました。
進行性の尿路上皮癌（膀胱癌や腎盂尿管癌）に対する薬物療法は、従来の抗癌化学療法と免疫療法が主体でしたが、近年、ADC（抗体薬物複合体）と呼ばれる新規の薬剤が登場し、治療成績をさらに改善させております。ADC薬の治療抵抗性に関わる因子はほとんどしられておりませんが、細胞内から抗癌剤を排出するトランスポーター蛋白の発現が影響するのではないかと予想されています。
本症例報告は、これらの薬物療法および転移巣切除術を施行されていた患者さんにおいて、膀胱原発組織と転移巣組織を病理学的に検討し、ADC薬に治療抵抗性となった転移巣においては、複数のトランスポーター蛋白の発現が亢進していることを確認しました。ADC薬を投与された臨床症例における、薬剤抵抗性機序に関わる重要な知見として評価されました。
現在我々は、ADC薬の投与を受けた患者さんの腫瘍組織を評価し、トランスポーター蛋白の発現状況の解析をさらに進めております。本研究の成果は、進行尿路上皮癌に対する薬剤選択に重要な情報をもたらすものと考えております。
古藤野先生おめでとうございます。
