女性の不妊治療の手術について紹介します。
婦人科疾患の手術は、卵巣機能や子宮環境に影響を及ぼす可能性があり、妊娠しやすい状況を維持または改善するために、一般産婦人科で行われる方法よりも注意をして手術をします。また、当センターでは、他科とも連携しつつ、妊娠を目指すための婦人科疾患の手術を行います。
腹腔鏡検査・腹腔鏡下手術
腹部2~3カ所を小さく切開して、そこから腹腔鏡を腹腔内に入れて、卵管や卵巣、子宮、さらに腹腔内の状態を観察する検査です。
子宮卵管造影検査で異常が認められた場合、子宮内膜症が疑われる場合、一般検査がすべて正常にもかかわらず長期間妊娠しない場合、いろいろな治療しても妊娠しない場合などに行います。
腹腔内の観察だけでなく、状況によっては手術も行います。
軽度の癒着や軽度の子宮内膜症病変は、腹腔鏡検査により治療可能で、診断だけでなく治療の意味も大きい検査です。
腹腔鏡下多囊胞性卵巣焼灼術(ドリリング)
複数の卵子が同時に成熟し、排卵が起こりにくくなる多囊胞性卵巣症候群(PCOS)の治療法の一つです。
腹腔鏡による手術で、多囊胞性卵巣の表面に細かい穴をあけ、卵胞の発育をよくしたり、排卵しやすくしたりします。
腹腔鏡下癒着剥離術
過去の感染などに伴う炎症や子宮内膜症によって子宮・卵巣周囲に癒着が生じることがあります。この癒着を解除することにより、性交痛の解消、卵子のキャッチアップ障害を改善させます。
子宮筋腫の手術
子宮筋腫は、子宮の筋肉からできる良性の瘤(こぶ)のことです。発生する位置や大きさによっては、受精卵の着床を妨げたり、流産の原因になる可能性があります。子宮筋腫の状態と不妊原因や妊娠しない期間、年齢などを考慮して、手術を検討します。
今後の不妊治療を見据えた手術プランが必要です。開腹で行う場合、腹腔鏡下に行う場合、子宮鏡下に行う場合があり、状況に応じて選択します。
子宮内膜症の手術
子宮内膜症は、子宮内腔以外に子宮内膜様組織が発生して、その部分で増殖し月経のような出血をおこす病気です。月経痛を伴うことが多いのが特徴です。卵管で増殖すると卵管が狭くなったり、閉塞してしまう可能性があります。卵巣で増殖・出血をすると血液が溜まった卵巣腫瘍となり、近くで育とうとしている卵子にダメージが出たり、排卵しにくくなることがあります。また、子宮の筋層内で増殖して炎症を起こし、子宮筋層が肥大する子宮腺筋症も、月経痛が強いのが特徴です。
子宮内膜症の手術は卵巣機能に影響をおよぼす可能性があり、慎重な手術が必要となります。
子宮内膜ポリープの手術
子宮内膜ポリープは子宮内膜に発生した良性のいぼ(ポリープ)です。ほとんどの場合、原因は不明ですが、子宮内膜感染が起きた場合は、小さいポリープが多発することがあり、抗生剤の内服治療を行うことがあります。
月経時に周りの組織とともにはがれると消失しますが、再発もしやすいです。症状はないことがほとんどで、基本的には経過観察でよいですが、胚の着床を障害していると考えられる場合には手術を行います。子宮鏡を子宮内に入れ、水を入れて膨らませたのち、カメラの映像を見ながら電熱線のワイヤーでポリープを削り取ってきます。
卵管水腫の治療
感染や子宮内膜症の炎症などに伴って卵管が閉塞し、卵管液(血液・膿など)が卵管にたまることがあり、それを卵管水腫(卵管留血種、卵管留膿腫)といいます。
この状態では、片側だけの卵管閉塞であっても、古いたまった液体が子宮の中に逆流し、精子の動きを止め受精能力を失わせたり、受精胚の着床を阻害したりします。
卵巣への血流を考慮して慎重に腫れている卵管のみを切除したり、子宮への卵管水腫の内容液の逆流を防ぐため、卵管を子宮側の根元でわざと焼灼し閉塞させる手術を行います。