経皮的心房中隔欠損閉鎖術、経皮的卵円孔開存閉鎖術
心房中隔欠損症、卵円孔開存症に対するカテーテル治療
経皮的心房中隔欠損閉鎖術、経皮的卵円孔開存閉鎖術
初めに
ー心房中隔欠損症や卵円孔開存症とはー
心房中隔欠損症は、心臓の上方に位置する左右の部屋(右心房と左心房)の間に穴が開いている先天性の病気です。先天性心疾患の7~10%を占め、成人先天性心疾患の代表的な疾患です。症状としてむくみ、全身のだるさや労作時の息切れなどの心不全症状のほか、心房細動などの不整脈、肺の血圧上昇(肺高血圧)、脳梗塞をきたすことがあります。欠損孔を通じて左心房から右心房への血流が増えることで、病態が進行することが知られています。
卵円孔開存症とは、胎児の時に血液を循環させるために開いている穴(卵円孔)が出生後も閉じずに残っている状態です。健常人の10〜25%程度みられると言われており、無症状であれば治療は不要です。ただし、卵円孔開存が原因で、下肢などに生じた血栓が右心房から左心房に通過し、脳梗塞を発症することがあります。原因不明の脳梗塞と診断された患者さんでは、卵円孔開存症の合併頻度が高いことが報告されています。
これら2つの病気は、成り立ちは異なりますが、どちらも心臓の左右の部屋を仕切る壁(心房中隔)の異常が本質です。
心房中隔欠損症、卵円孔開存症に対する治療法
経皮的心房中隔欠損閉鎖術
心臓への負荷が大きくなった場合、閉鎖術が必要となります。方法は大きく開胸手術とカテーテル治療の2通りです。当院はこれまで外科的閉鎖のみ対応しておりましたが、2025年に施設認定を取得し、成人の心房中隔欠損症に対するカテーテルを用いた閉鎖術も実施可能となりました。治療は大腿静脈からカテーテルを挿入し、欠損孔の大きさ・形状を評価して適合するデバイスで閉鎖します(図1)。創は小さく、入院は概ね1週間前後と体への負担が少ない治療です。なお、欠損孔の位置・大きさ・形によってはカテーテル治療が適さない場合があり、その際は心臓内科医・心臓外科医が連携して最適な方法を検討します。
図1
アボットメディカルジャパン合同会社
経皮的卵円孔開存閉鎖術
卵円孔開存症が原因と考えられる脳梗塞を発症した方は、閉鎖術を検討します。手技の流れは心房中隔欠損症とほぼ同様ですが、使用するデバイスの形状が異なる点が特徴です。入院期間は1週間未満で、今後の脳梗塞発症予防が期待できます。