経皮的僧帽弁接合不全修復術 (TEER)

心臓・血管内科/循環器内科
助教

廣瀬 優

心臓・血管内科/循環器内科
助教

廣瀬 優

僧帽弁閉鎖不全症とは?

僧帽弁閉鎖不全症は、僧帽弁がうまく閉じないことで血液が逆流する進行性の疾患です。原因は、弁やその周囲組織の変性による一次性(器質性)と、虚血性心疾患や心筋症などに伴う左心房や左心室の拡大によって生じる二次性(機能性)に大別されます。軽症では無症状のことが多いものの、進行すると心房細動などの不整脈や心不全を引き起こします。若年でも発症することがありますが、年齢とともに増加する場合が多く、高齢化が進む日本では注意すべき循環器疾患の一つです。

経皮的僧帽弁接合不全修復術 (TEER) とは?

重度の僧帽弁閉鎖不全症の標準治療は外科手術ですが、手術リスクが高い方や高齢の方など、何らかの理由で開胸手術が受けられない方に対して、胸を開かずに逆流を減らす低侵襲な治療法が経皮的僧帽弁接合不全修復術です。当院では2019年5月よりこの治療を開始し、これまで100例の患者様を治療してきました。従来のアボット社 MitraClipシステムに加え、2025年4月からエドワーズライフサイエンス社のPASCALシステムを当院では導入しています。どのシステムを用いるかは超音波画像や病態を踏まえ、チームで協議のうえ、お一人に最適なデバイスを選択します。

本治療により、心不全症状の軽減・QOLの向上・心不全再入院の抑制が得られることを、多くの患者様で実感しています。心不全は循環器疾患の終末像であり、再発を重ねるほど生命予後が著しく悪化します。私たちは「心不全を起こさない・繰り返さない」を合言葉に、薬物療法・外科手術・クリップ治療を組み合わせた包括的な心不全診療に取り組んでいます。

治療の流れ

医療従事者の方へ

  • 1. 全身麻酔下に大腿静脈からカテーテルを挿入します。
  • 2. 経食道超音波検査下に右と左のお部屋を隔てる壁(心房中隔)を穿通して、クリップを左心房内に誘導します。
  • 3. 僧帽弁の逆流部位にクリップを誘導し、クリップによって弁を挟み込みます。
  • 4. クリップ留置後、逆流量が軽減されたことを確認し、治療用カテーテルを抜去し、穿刺部の止血を行います。
  • 治療の流れをイラストと動画にしております。

MitraClipシステムによる治療手順(Abbott社提供)


特徴

  • 1. 身体への負担が少ない
    胸を開く手術ではないため、心臓を止めずに手術を行います。手術リスクが高い患者さんでも治療できる可能性があります。
  • 2. 術後早期に離床が可能です。
    術後早期にリハビリテーションを開始し、体力低下を予防します。
  • 3. 最善の治療を届けます
    経皮的僧帽弁接合不全修復術や外科的治療、心室同期療法など、患者様に最もメリットがあると思われる治療法をチームで話し、方針を決定いたします。

メッセージ

患者さんへ

心臓弁膜症は年齢とともに増えますが、ご高齢でも十分に治療可能な場合がございます。当チームでは患者さんの声に耳を傾け、最適な治療をご提案できるよう心掛けております。

ご紹介の先生へ

僧帽弁閉鎖不全症の重症度判定には、定量評価や負荷心エコーが必要となる場合があります。治療方針等で迷われる際は、速やかに対応させていただきますので、どうぞお気軽にご相談下さい。

専門外来の日程

午前 廣瀬
午後 廣瀬

時間はお電話でご確認ください。
問い合わせ 0282-86-1111