学生へのメッセージ
血液・腫瘍内科では、白血病、骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫、多発生骨髄腫等の悪性疾患や再生不良性貧血に代表される難治性疾患を主に扱っています。これらの疾患の特徴の一つとして、遺伝子変異解析等の基礎的な病態解析の成果が比較的速やかに診断、治療、予後予測等の実際の臨床の場に反映され、患者さんたちに役立っていることがあげられます。
一例として、慢性骨髄性白血を紹介したいと思います。この疾患に認められるBCR-ABL1遺伝子の発見とそれに続く解析の結果より、最終的には新しい治療薬(分子標的治療)が開発されました。その結果、それまでは造血幹細胞移植を行わなければ、平均生存期間が約5年であったのが、外来での分子標的治療の治療だけで(しかも、飲み薬で)多くの人が長期に生存するように状況が一変しました。患者さん達への利益は多大なものです。また、このような遺伝子変異を元に治療方針の決定する方法は、これから発展する「がんゲノム医療」の基本にもなっています。
血液・腫瘍内科で実際に行っている治療方法は、(1) 化学療法、(2) 移植療法、および (3) 細胞療法と多岐にわたります。そしてその大きな特徴としては 「たとえ悪性疾患といえども、可能な限り治癒を目指して治療を行なっている」点にあります。化学療法に関しては、従来の抗腫瘍薬に加えて、腫瘍細胞を狙い撃ちする分子標的治療薬が続々と導入され、多くの患者さんに使用され効果を発揮しています。また、血液疾患に対して行われる移植療法(骨髄移植、末梢血管細胞移植、臍帯血移植)は、移植の際に拒絶の原因となる免疫組織をも移植すると言う点で他領域の移植とは決定的に違い、提供者(ドナー)の制約等、複雑な治療なのですが、治療技術の進歩の結果、より多くの患者さんに対して移植が行われるようになり役に立っています。更には、人の生きた細胞を治療に用いる細胞療法(ドナーリンパ球輸注 (Donor lymphocyte infusion: DLI) 療法や、Chimeric antigen receptor (CAR) T-cell療法)も積極的に導入しています。
このように、悪性疾患に対して立ち向かっていくと言う点で非常に魅力的な領域であると断言できます。
やる気のある学生さんの入局をお待ちしております。
(佐々木光)
学生・研修医の皆さんへ
皆さんは、この先どんな医師になりたいのでしょうか?ちょっと想像してみて下さい。はっきりとしたものが見えてきた方もいるでしょう。一方、ぼんやりとした画しか見えないという方もいるかも知れませんね。これからの道を決める時までには、もっと明らかな画が見える様になっておきたいものです。明らかな目標となる先輩の姿でも良いと思います。 目標をなるべく明確にして、進めば良いと思います。これは、自分の反省からです。しかし、世の中は思ってもみない方向へ転がる事もあります。
私が血液内科を選んだのは、ひとつの臓器にとらわれたくなかった事と、なんとなくの居心地の良さでしょうか。特別に血液が好きだった訳ではありませんでした。その日の仕事をこなして行くだけでした。
私が医師になった頃には、骨髄腫は良くならない・痛い病気であり、担当になるのが憂鬱でした。しかし、学会発表で関わった事や、続々と出てくる新薬により、患者さんが明らかに良くなってゆく歴史は、まさに医学の進歩を感じさせるものでした。思ってもいない方向に転がり続け、今は骨髄腫を中心に興味を持って診療しています。
また、物事は分かってくると面白くなるものなので、骨髄腫を始め血液疾患を分かりやすく皆さんに伝えたいと考えています。但し、一方通行でなく、皆さんの頑張りにも期待するところです。目標を持って、進んで下さい。
(半田智幸)
研修医へのメッセージ
獨協の最大の魅力は、栃木県内外から多種多様な患者さんが集まってくることです。毎月何例も、急性白血病と新規に診断される患者さんがいる環境は、日本中でもなかなかないと思います。症例数が多いだけでなく、一例一例をカンファレンスで議論することで、新たな知見が得られ、症例報告につながる機会が多くあります。
また、経験豊富な指導医がいることも魅力の一つです。私は、大学院を終えて久々に臨床に復帰しましたが、判断に迷った場合に、いつでも気軽に相談できる先輩医師がたくさんいることが大変ありがたかったです。移植のマネジメントだけでなく、主治医としての病状説明の仕方など、獨協の血液内科で学んだことがたくさんあります。
血液内科の治療は日々進化しており、治療によって患者さんの状態が劇的に改善することもあり、大変魅力的でやりがいのある科です。獨協の血液内科で一緒に働いてみませんか?
(中村文美)
女性医師へのメッセージ
当科での血液診療は、白血病を中心とした悪性疾患が中心になります。現在は、化学療法、移植療法、分子標的療法及び免疫療法を組み合わせて選択をし、治癒を目指した治療が行われます。決して、不治の病ではありません。また、診断、分類、治療の層別化のために、形態診断、表面マーカー解析、染色体分析及び分子生物学的検査を駆使します。診療自体は肉体的に少々タフではありますが、ゆっくり考える時間があり、女性にも好まれる領域です。当科では女性が、准教授や講師として活躍しており、努力・実績に応じて男女公平に評価がされています。
また本院では、育児短時間勤務制度が導入されており、出産後の女医が復帰しやすい体制が整えられています。育児中であっても、女性が診療・研究の研鑽を積み、キャリアを継続することが可能です。当科の女性医師もこの制度を利用させて頂いています。ぜひ、女性医師支援センターのホーム・ページをご参照下さい。当科では、(男性医師のみならず)女性医師も大歓迎ですので、興味がおありの先生方は是非ご連絡を頂けましたら幸いです。
(三谷 絹子)
OBからのメッセージ(病院勤務)
みなさんこんにちは、新松戸中央総合病院で血液内科部長として働いている田所治朗です。私は1995年に獨協医科大学を卒業、同年に血液・腫瘍内科(当時 第三内科)に入局いたしました。入局後2年間は初期研修医として他病院を含め研修し、3年目からは獨協医科大学大学院に入学、三谷教授の指導のもとで医学博士をとらせていただきました。その後は助教として臨床、研究、教育に携わりながら、日本血液学会の専門医、指導医も習得することができました。その後、学内講師となりましたが、2012年3月に家庭の事情で千葉に転居することとなり、現在は非常勤講師として外来診療を行っております。就職活動は東日本大震災などもあり、一時中断したりしましたが血液内科専門医、指導医を持っていたこともあり、大きな問題もなく新松戸中央総合病院に血液内科部長として就職できました。もともと、血液内科がある病院ではなかったため当初は一般内科としても働いていましたが、近くに血液内科を標榜している病院が少なく、徐々に周りの病院にも認知され、現在は日本血液学会研修認定施設となり、血液内科専門医4人と増員、白血病やリンパ腫などを中心に入院患者数約30人、1日外来患者数約40人、治療も自家末梢血幹細胞移植も行うなど一般病院としては比較的大きな規模まで成長することができております。
最近は高齢化もあり、血液内科の患者数も増加傾向にあります。その影響で血液内科を標榜する一般病院も増加しており、血液内科医としての募集も多くなっています。
私の経験としては大学にいるとあまり感じませんが(当たり前のことなので…)、基礎をきちんと学び、そのうえで専門医、指導医となることが転職にも非常に有利に働いたと考えています。
血液内科へようこそ。みなさんと一緒に働ける日を楽しみにしています。
(田所治朗)
OBからのメッセージ
獨協医大の学生さんや研修医の先生方は、若いうちは大学病院で高度な医療を究め、時期が来たら新規開業したい、あるいは医院継承で開業する予定・・・という人が多いと思います。内科で開業するなら患者さんの多い循環器や消化器。高齢化社会を見据えて神経内科。糖尿病専門に特化した内分泌もいいな・・・。
でも開業医への道は本当にそれだけでしょうか?血液内科出身で開業は?というと『ムリムリ。患者さん来ないよ。』と思われるかもしれません。しかし実際は獨協医大血液・腫瘍内科出身のドクターは9割近くが開業しており、地域の中で活躍しています。医局OBの開業医の比率は他の内科系医局と同様で、結論から言うと『血液内科=開業できない』ということはありません。
血液内科医の開業についてメッセージを書かせて頂くことは、私の先輩に開業され成功した先生が多数おられますので、私には分不相応と思いますが、三谷絹子先生が血液内科主任教授に就任されました当時、医局長をしていた関係からお声をかけて頂いたものと思っております。私なりに血液内科医の開業について、良かった点を自分の経験からお話をさせて頂きたいと思います。
私は平成12年に医局を退職し、実家の医院継承で開業しました。当初は開業医で診られる血液疾患は少なく、大学病院での経験を活かせる部分が少ないと感じていましたが、開業して数年経ってみると少しずつ良い点がわかるようになりました。
開業してどのような血液疾患を診ているか?ですが、鉄欠乏性貧血をはじめとして、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、M蛋白血症、輸血非依存のMDS、真性多血症や特発性血小板増多症の維持療法などです。
近隣の開業医の先生から『大学病院に紹介する程でもないから・・。』と原因不明の貧血、多血症、白血球減少・増加、血小板増加・減少、頚部リンパ節腫脹などの精査で御紹介を頂く事もあります。自分の医院でできる検査を行った上で、大学に紹介すべき患者さんを見逃さないように心がけています。
また血液疾患の患者さんは厳しい治療に耐え、生死の境を主治医と御家族と共に乗り越えるという経験から、主治医との信頼関係が非常に厚く、血液疾患は寛解・治癒した後も診察に訪れる方や、患者さんの御家族も時々いらっしゃいます。私の医院にも血液疾患の寛解後、生活習慣病の患者さんとして通院している方も数名おり、患者さんの笑顔から元気を頂いております。
内科開業医にはあらゆる年齢・職業の方がいろいろな症状で来院されます。自分の専門外はNGというスタンスもあるかもしれませんが、まずは自分の医院で対応しなければなりません。血液疾患は全身疾患とも言われますように、その経過・治療の過程で多臓器への障害や合併症を併発していることが多く、血液疾患を1例受け持つだけで豊富な臨床経験を積むことができます。そういった経験から、患者さんの全身管理を行う事ができ、良きプライマリケア医として開業ができるのではないかと思っています。
病棟勤務時代、毎朝至急の血液検査データーが届くと、輸血のオーダー、抗生剤開始・変更の指示、画像診断の予約・・・とスピード感のある多忙な日々を送っていました。当時はそれが毎日のルーテインでしたが、開業してみますと血液検査データーの推移から、病状の変化をいち早く読み取り、迅速に対応する習慣が身についており、血液内科病棟で学んだ良い経験であったと思っています。
高齢化や病院での入院日数の短縮に伴い、在宅医療を開業医が積極的に行っていく時代になりましたが、患者さんも終末期の割合が増加しています。血液内科では造血器悪性腫瘍が全体の8〜9割を占め、その中には治療抵抗例や再発例などの終末期の患者さんも多く、ターミナルケア・緩和治療に介入する機会が数多くありました。私は開業以来、在宅診療を続けてきましたが、この経験が末期癌患者さんの全身管理・緩和ケアにとても役立ちました。在宅診療は、血液内科での経験が活かせる分野の1つであると思います。
血液疾患は病状の急変は日常茶飯事。治療が奏功し寛解に至っても気が抜けません。常に再発が頭をよぎり、また再発後〜治療抵抗性の時期には『終末期』ついて悩みながら診療していました。血液内科では常に『最悪の事態』を想定しながら、患者さんに接するといった習慣がいつしか身についていました。
開業医になってからも、患者さんの訴え・所見に変化があると『最悪の事態』を考えていち早く行動し、自分が心配した最悪の事態にならなかった時は安堵する・・・といった診療スタイルを今も続けています。この診療における危機管理は『最悪』を『最善』に変えるもので、血液内科で鍛えられたものだと思っています。
開業医として何を目標にするかによって診療科による向き不向きは確かにあると思います。専門領域に特化した開業は血液疾患という特殊性からすると難しいと思われますが、地域医療に密着した、内科疾患全般からターミナルの在宅診療まで、全身管理のできる開業医として血液内科は一番向いている・・・と自負しております。
新型コロナウイルス感染の全世界的流行の中、コロナウイルス感染症と共存する『新しい生活様式』が提起され、これに伴い日本の医療も根底からの変換・刷新を余儀なくされております。一般開業医へのニーズもコロナ禍後は専門性の高い重装備のクリニックから、全身管理のできるフットワークの軽い診療所へ時代は大きくシフトしていくかもしれません。
血液内科に少しでも興味があり、大学病院では最新の血液学を究め、その後は開業し地域医療に貢献したい・・・そんな希望のある方こそ血液・腫瘍内科が最適だと思います。
どうか安心して自信を持って血液内科医局のドアをノックして下さい。
原稿の御依頼を頂きました獨協医大血液・腫瘍内科教授 三谷絹子先生に、この場をお借りしまして深謝致します。
医局と先生方の益々の御発展を祈念致しております。
血液・腫瘍内科 医局OB 青柳医院 青柳正邦
女性医師からのメッセージ
大学での初期研修時、大学に残るメリットが大きい科で勉強したいと考えていたところ、血液内科の研修で、医局の先生方にきめ細かいご指導を頂き、治療の面白さや大学ならではの臨床と研究のつながりに魅力を感じ、入局を決めました。
入局後、大学院に進学、妊娠・出産をはさみながら、フルタイム勤務を継続していましたが、2人目の出産後、仕事と育児の両立の難しさを痛感し、3人目の出産後、働き方を変える決心をしました。退職を考えた日もありましたが、勉強も続けたいことを御相談させて頂き、現在は週一回外来勤務で勉強させて頂いています。
女性医師の難しさは、理想と現実の折り合いをつけることかもしれませんが、周囲の先生方に支えて頂き、少しずつでも歩み続けることはできると、考えられるようになりました。様々な選択肢の中から、今必要なこと、将来のために必要なことを取捨選択する際、親身に相談に乗って下さり、手を差し伸べて下さる医局の先生方の存在は、かけがえのないものだと思います。
血液疾患の診断・治療は、常に発見がある楽しさに満ちていると思います。未来の血液内科の先生が増え、ともに診療にあたれる日が来ることを楽しみにしています。
(永澤英子)
女性医師からのメッセージ
私は現在、2人の子供を育てながら短時間勤務をしております。特に女性の研修医や学生さんから、なぜ血液内科に入局したのですか、と問われることがあります。その答えはシンプルですが、「血液に最も興味があったから」です。入局する際に、将来の子育てや家庭との両立について考えることがあるのだろうと思います。私もそうでした。色々と悩みましたが、自分が最も興味の持てる分野に進んでみようと思い、入局を決めました。研修医のときに、血液疾患を抱える患者さんや、治療に奮闘する医師や看護師を見て、自分も血液に関わっていきたいと思いました。そのときの気持ちが、今に繋がっているのではないかと思います。子育てをしながらも、医療に携わっていたいという私の気持ちを、家族も理解してくれています。医局の先生方にご負担をかけているという申し訳なさを感じつつも、自分にもできる役割を果たしていけたらと考えています。子育てに追われる毎日ではありますが、医師として働き、血液を学び続けられる喜びも感じることができます。血液・腫瘍内科にご興味のある方は、ぜひ見学に来ていただければ、と思います。
(古市志歩)
女性医師からのメッセージ
血液疾患は、勉強していても想像がつきにくく難しい病気ばかり…といったイメージがあると思います。学生の時には私もそのように思っていました。血液疾患の患者さんは少数ですが、実際には血液疾患の治療だけでなく、治療に伴う合併症に対し呼吸器、感染症、循環器など幅広い分野の治療が必要となります。多岐の分野の経験を積む機会は豊富で、新内科専門医取得に役立つかと思います。患者さんを診断時から良くなっていくのを見届けられるのが血液・腫瘍内科の特徴で、医師として仕事のやりがいを感じます。血液分野の治療は日々進歩し、大学病院として新規治療ができること、更に大学院での研鑽を積むこともできます。医師となってその先どうするかに関して迷いがあるのは皆あることです。どうしようかなと迷っていたら、雰囲気を見にくるだけでも是非来てください。卒業生として獨協医科大学 血液・腫瘍内科の魅力や皆さんの質問にお答えできれば思います。
(新井ほのか)
女性医師からのメッセージ
1998年、当時の血液内科に入局しました。2年の研修期間を終えて、3年目からは血液内科での病棟勤務をしてきました。過ぎていく日常の中で、研究などもやってみたいという思いから、4年目からは血液内科の大学院へ進みました。病棟勤務、外来診療、そして実験と色々と大変ではありましたが、充実した毎日を過ごしていました。
そして、4年間の大学院生活を終える、2004年に結婚、2005年、1人目の長女を出産しました。
初めての育児であり、完全母乳であったため、なかなか預ける事も難しく、実家も遠いため大変でしたが、どんな形でも仕事には戻りたいと思っていたので、産後8ヶ月の2006年、娘を保育園へ預けて仕事復帰しました。ただやはり当直は難しく、また病棟勤務では急な呼び出しに対応出来ないこともあり、三谷教授とも相談させて頂き、外来のみでの復帰という形にして頂きました。
初めは0歳での保育園という社会生活に多少不安はありましたが、とても信頼のおける先生方に恵まれ、安心して働く事が出来ました。また病気の際には、病児保育施設が併設してある小児科をかかりつけとし、病気の時でも休む事なく仕事をする事が出来ました。
そして、仕事と育児との両立に慣れてきた頃、2008年に長男を出産しました。長女の赤ちゃん返りなどもあり、また違った育児となりましたが、周りの人達に助けられて、5ヶ月で仕事復帰しました。
2012年、長女が小学生となるのをきっかけに土曜日に働く事が難しくなり、一時退職も検討したのですが、女性医師支援センターなどの設立もあり、短時間制度を取得し外来での勤務を継続しました。
2014年には次男を出産して、現在は3人の子育てと仕事の両立に、大変ではありますが、とても充実した毎日を過ごしています。
今こうして仕事していられるのも、家庭、職場での理解、また保育園や病児保育施設があったからであり、本当に周りに助けられていると思います。そして子供のおかげで、自分の世界も広がり、それは患者さんと接していく中でも役に立っていると私は思います。今後も子育てしていく中で、また違った困難や壁が出てくるとは思いますが、大学病院で働く医師として、これからの若い女性医師の力になれるように、色々と発信できていけたらと思っています。
(礒 桐子)