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RESEARCH ACTIVITY

研究と業績

第118回日本精神神経学会学術総会優秀発表賞を受賞して

獨協医科大学精神神経医学講座 菅原典夫

この度、「双極性障害外来患者における 3 年後治療反応の予測因子」と題して、第118回日本精神神経学会学術総会で発表したところ、優秀発表賞に選ばれました。本研究は、日本精神神経科診療所協会と、日本臨床精神神経薬理学会のメンバーによる合同プロジェクト(MUSUBI)の成果のひとつです。この場を借りてお礼申し上げるとともに、内容について簡単にご紹介致します。

双双極性障害は気分症状の増悪を繰り返し、長期の経過を有することが知られており、Real worldの経過に着目した研究が注目されています。そこで、2016 年の MUSUBI 1 次調査に参加した患者さん 3106 名について、その 3 年後に実施した 2 次調査までのデータを用いた治療アウトカム解析を実施しました。 2 次調査までの主要項目評価を完遂した対象者は 1,647 名でした。 3 年後の時点で19.3%の対象者が 1 年以上の持続的寛解を達成していた一方で、何らかの 47.5%が病相期にある状態でした。持続的寛解を予測する要因として、パーソナリティ障害を有していないことや、 1 次調査の時点で長い寛解状態にあることが分かりました。また、2 次調査で1 年間に抑うつ症状を体験していたことと関連する要因として、1 次調査時点における全般的機能 (GAF) が低いこと、希死念慮があること、寛解状態が短いことが明らかにされました。

MUSUBI のデータ解析により、我が国における双極性障害外来患者の自然史が明らかになるとともに、長期経過の予測因子が判明しました。この度は、貴重なデータを報告する機会を賜り、ありがとうございました。



第116回日本精神神経学会学術総会優秀演題賞を受賞して

獨協医科大学精神神経医学講座 徳満敬大

この度、「双極性障害患者に対する抗うつ薬の処方実態と患者プロフィール」と題して、第116回日本精神神経学会学術総会で発表したところ、優秀演題賞に選ばれました。本研究は、日本精神神経科診療所協会と、日本臨床精神神経薬理学会のメンバーによる合同プロジェクト(MUSUBI)の成果のひとつです。この場を借りてお礼申し上げるとともに、内容について簡単にご紹介致します。

双極性感情障害の治療に関して、抗うつ薬の処方については議論が分かれており、real worldの治療行動を調査した研究が注目されています。このため、MUSUBIの1次調査に参加した患者さん2075名のビッグデータを用いて、抗うつ薬の処方実態とプロフィールを解析しました。その結果、ベースラインでは、双極性障害患者さんの40.9%に抗うつ薬が処方されていることが明らかになりました。加えて、うつ病相にある患者さんは、他の病相に比べて、統計的有意に高い割合で抗うつ薬が処方されていました。抗うつ薬の種類は、デュロキセチンが最も処方されていました。また、抗うつ薬を処方されている患者さんは、統計的有意に機能の全体的評定尺度(GAF)が低値でした。さらに、抗うつ薬を処方されている患者さんは、気分安定薬の併用率が低く、抗不安薬および眠剤の併用率が高いことが分かりました。MUSUBIのデータ解析により、うつ病期のGAFが低い患者など、複雑な病像を呈する治療困難な症例に対して、寛解達成と社会適応水準の向上を目指し、ある程度選択的に抗うつ薬の処方が行われていることが判明しました。

多数の関係者の協力によって得られたこれらのビッグデータにより、日本の精神科医療の実態が明らかとなりました。この度は、貴重なデータを報告する機会を賜り、ありがとうございました。



第116回日本精神神経学会学術総会優秀演題賞を受賞して

獨協医科大学病院精神科神経科 レジデント 佐藤由英

このたび、日本精神神経学会で優秀発表賞を受賞いたしましたのでご報告させていただきます。電気けいれん療法Electro Convulsive Therapy (ECT)による発作後脳波の抑制を表す指標であるPostictal Suppression Index (PSI)は、良好なけいれん発作を得たことと関連するとされ、臨床的には機械評価だけではなく、目視によっても記録される指標です。今回は当科におけるうつ病患者51例でのECT結果を解析し、PSIと他の臨床指標や、治療予後との関連についての検討を行いました。その結果、PSIが抑制良好である場合、(1)ECT初回施行時のけいれん時間 (EEG endpoint)が長いこと、振幅 (Maximum Sustained Power)や対称性 (Maximum Sustained Coherence)が高いこと、交感神経系の興奮 (Peak Heart Rate)などと関連性を認めました。また(2)ECTコース終了の直近で評価された抑うつ症状の寛解率が高いことと関連する一方、ECT施行後から再入院までの生存曲線に差は認めらなかったことが分かりました。この受賞を励みに、今後も精神科の臨床や研究に精力的に取り組んで参りたいと思います。