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ようこそ
令和5年4月1日より当講座の担当となった古郡規雄です。我々に与えられた使命は人々の幸福を精神医学の面から支えることと考えます。
精神医学は統合失調症、双極性障害、発達障害、認知症などの生物学背景の強い疾患から神経症性障害、摂食障害、PTSD、パーソナリティ障害など心理的背景の強い疾患まで幅広い疾患を取り扱います。さらに不登校や引きこもりといった社会的背景の強いものまで含まれます。精神医学において、Bio-Psycho-Socialアプローチは、疾患や症状を理解するための枠組みです。つまり、病気は単に身体的な症状だけでなく、心理的、社会的な要因も含んでいます。例えば、うつ病を持つ患者は、単に身体的な症状(睡眠障害、食欲不振など)だけでなく、心理的な問題(自己価値感の低下、無力感など)や社会的な問題(仕事の失敗、社会的孤立など)も抱えていることがあります。このアプローチに基づいて、われわれは、身体的な症状だけでなく、心理的、社会的な要因も含めて、病気を治療することを目指します。われわれは苦手意識なくこれらに取り組み、標準的な診断と治療を含んだ医療を提供していきます。また、患者が治療計画に参加できるよう、患者とのコミュニケーションや、患者と家族との関係を重視することも重要と考えています。さらには先端医療にも積極的に取り組み、治療の難しい疾患にもチャレンジしています。
本講座は地域医療に貢献する医師を養成する講座で、優秀な精神科医を育てる質の高い教育に力を入れています。患者さんに対し共感的態度で接しながらリサーチマインドの高い、バランスの取れた良医を輩出するため、本講座の伝統を守りつつ最新の教育内容や教育方法も取り入れています。全国的に有名な講師陣をゲストに迎え、定期的な勉強会も行っています。
精神疾患の研究は、精神医学だけでなく、心理学、神経科学、遺伝学、薬理学、社会学など、さまざまな領域で行われています。これらの研究により、精神疾患の原因や病態生理、診断、治療、予防などについて理解が深まっています。具体的な本講座の研究テーマとしては、薬物治療と神経伝達物質の役割、遺伝子の変異が精神疾患や治療効果にどのように関連しているか、環境要因がどのように精神疾患の発症や進行に影響するか、患者の生活や社会的支援が治療成績にどのような影響を与えるかなどがあります。これらの中で精神科医が日常の精神科臨床で遭遇する問題にこそ、患者さんやご家族に役立つような研究課題があると考え、成果を地道に積み重ねて行くことが当講座のモットーです。