研究内容


当部門では以下のような項目を中心に臨床および基礎研究を行い、耳鼻咽喉科疾患のさらなる病態解明、治療法の開発を行っております。
領域によっては獨協医科大学基礎医学講座や他大学との共同研究も予定しており、幅広い領域にわたる基礎的研究を盛んに行っております。

1.中耳真珠腫、癒着性中耳炎の成因の解明と保存的治療法の研究

中耳真珠腫や癒着性中耳炎などに対してその成因を究明するため、air-liquid interface methodを利用した三次元培養による鼓膜表皮や温度応答性培養皿を用いた鼓膜の作製を行っています。作製した人工鼓膜に種々のサイトカインやケモカインを反応させたり、物理的な刺激を加えたりすることで実験的に真珠腫や癒着性中耳炎のモデルを構築する試みを行っています。

2.組織再生工学を応用した中耳粘膜再生の研究

真珠腫性中耳炎や癒着性中耳炎などの手術後に鼓室、乳突腔の粘膜が障害され、正常な粘膜が欠損するケースはしばしば起こります。その欠損部を補うために温度応答性培養皿を用いて中耳粘膜のシートを作製し、移植が可能であるか、実験動物を用いて検討を行います。また移植した中耳粘膜シートが個体に生着し、正常な組織と同様な形態を呈するのか光顕および電顕レベルでの観察を行います。

3.鼻腔腫瘍 及び 頭蓋底腫瘍に対する治療法の開発

鼻腔腫瘍の摘出方法に対する新しい術式を世界に発表し、低侵襲かつ効果的な鼻腔腫瘍摘出術を実施しております。内視鏡単独で摘出が困難だと思われる疾患に対しても外切開を併用して積極的に外科的治療を行います。その他鼻中隔粘膜穿孔や難治性前頭洞炎、鼻腔嚢胞疾患に対して新規術式を開発しております。

4.鼻副鼻腔における術後創傷治癒機転に関する研究

繰り返す手術によって粘膜の再生が障害されている疾患に対して、その粘膜上皮欠損部分を補うために、温度応答性培養皿を用いて鼻粘膜シートを作製し移植が可能であるか動物実験を用いて検討を行なっております。
そのほかにも、粘膜創傷治癒を促す新規材料の検討を動物実験モデルを用いて行っております。

5.樹状細胞を用いた頭頸部腫瘍に対する免疫治療の研究

同一患者より採取された腫瘍抗原の特定されていない腫瘍細胞と樹状細胞よりポリエチレングリコールを用い、融合細胞を作製します。この融合細胞は特定されていない腫瘍抗原をTリンパ球に抗原提示することにより、腫瘍特異的な抗腫瘍効果を誘導します。樹状細胞を用いたテーラメイドの免疫治療が実際に行えるよう、in vitroおよびin vivoでの検討を行います。

現在進行している臨床研究一覧

【臨床研究】
1. 中耳真珠腫、癒着中耳炎の成因の解明と保存的治療法の研究
2. 聴覚系をモデルとした環境による感覚情報処理機構の発達制御
3. 大脳皮質味覚野における空間的な恒常性維持機構の探求と味覚障害の病態解明
4. 各種栄養素における誤嚥性肺炎惹起性の検討
5. 次世代シーケンサーを用いた鼻副鼻腔炎症性疾患における常在細菌叢の遺伝子解析
6. 水代謝関連蛋白アクアポリンによるメニエール病発症メカニズムの解明と新規治療法の開発

【他施設共同研究】
1. 新規発症の良性発作性頭位めまい症における持続性知覚性姿勢誘発ふらつき(PPPD)
 発症予測  因子の解明:前向きコホート研究
2. 慢性副鼻腔炎・中耳炎における病態関連遺伝子の解明
3. 鼻内手術における病変へのアプローチ方法および粘膜フラップの有用性の検討
4. ムンプス難聴症例の全国実態調査


【文部科学省科学研究費(学術研究助成基金助成金)】
田中 康広 
 基盤研究(C)
 期  間 : 2016年度~2018年度
 助成金額 : 4,550,000円
 研究課題 :「温度応答性培養皿を利用した真珠腫上皮シートの作製と真珠腫の病態解明」

 基盤研究(C) 
 期  間 : 2020年度~2023年度
 助成金額 : 4,290,000円 
 研究課題 :「大脳皮質味覚野における空間的な恒常性維持機構の探求と味覚障害の病態解明」

穐吉 亮平
 若手研究
 期  間 : 2019年度~2023年度
 助成金額 : 4,160,000円
 研究課題 :「環境による中枢聴覚情報処理機構の発達制御」

西嶌 嘉容
 若手研究
 期  間 : 2019年度~2023年度
 助成金額 : 3,770,000円
 研究課題 :「嚥下機能における大脳皮質第一次運動野Top-down入力の修飾機構の解明」

穴澤 卯太郎
 若手研究
 期  間 : 2020年度~2024年度
 助成金額 : 4,160,000円
 研究課題 :「2光子顕微鏡を用いた大脳皮質運動野の嚥下機能Top-down修飾機構と病態解明」

冨山
 若手研究 
 期  間 : 2020年度~2024年度
 助成金額 : 3,250,000円 
 研究課題 :「発達期における不十分な味覚刺激が味覚伝導路形成に及ぼす影響」

【獨協医科大学研究助成金・奨励賞】
穐吉 亮平
 期  間 : 2017年5月31日~2018年3月16日
 助成金額 : 500,000円
 研究課題 :「聴覚系をモデルとした環境による感覚情報処理機構の発達制御」
 
 期  間 : 2019年7月1日~2020年3月18日
 助成金額 : 500,000円
 研究課題 :「環境による中枢聴覚情報処理機構の発達制御」

 期  間 : 2020年6月9日~2021年3月19日
 助成金額 : 2,000,000円
 研究課題 :「中枢聴覚情報処理への操作による治療アプローチ法の開発」

栃木 康佑
 期  間 : 2019年7月1日~2020年3月18日
 助成金額 : 300,000円
 研究課題 :「嚥下機能障害により誘発された誤嚥性肺炎動物モデルの確立、及び三大栄養素と
       誘発される肺炎の重症度の検討」

 期  間 : 2020年6月9日~2021年3月19日
 助成金額 : 300,000円
 研究課題 :「誤嚥する食事の栄養素の違いが誤嚥によって生じる肺炎に与える影響」

 期  間 : 2021年6月22日~2022年3月18日 
 助成金額 : 500,000円
 研究課題 :「嚥下機能障害に起因した誤嚥性肺炎動物モデルの作製」

青木 聡
 期  間 : 2020年6月9日~2021年3月19日
 助成金額 : 300,000円
 研究課題 :「嗅神経芽細胞腫の発症・病態に関する網羅的解析研究」

井上 由佳理
 期  間 : 2021年6月22日~2022年3月18日
 助成金額 : 500,000円
 研究課題 :「甲状腺未分化癌における未分化転化最初期の微小領域動態観察とその臨床応用の
       創出」

坂本 光
 期  間 : 2021年6月22日~2022年3月18日
 助成金額 : 300,000円
 研究課題 :「大脳における嚥下領野を神経細胞の活動パターンを操作し解明する」

大村 和弘(非常勤講師)
 期  間 :2016年5月31日~2018年3月16日
 助成金額 :500,000円
 研究課題 :「ウサギにおける術後鼻中隔粘膜弁の生理的機能に関する調査及び骨露出面再建方
       法の検討」

【獨協医学教育研究財団賞】
田中 康広
 期  間 :2020年4月1日~2021年3月31日
 交 付 額 : 1,000,000円
 研究課題 :「水代謝関連蛋白アクアポリンによるメニエール病発症メカニズムの解明と
       新規治療薬の開発」

井上 由佳理
 期  間 :2020年9月15日~2021年3月31日
 交 付 額 : 400,000円
 研究課題 :「甲状腺未分化癌における未分化転化最初期の微小領域動態観察とその臨床応用の
       創出」

穐吉 亮平
 期  間 :2021年4月1日~2022年3月18日
 交 付 額 : 1,000,000円
 研究課題 :「新規イメージング技術を用いた大脳皮質聴覚野の神経回路様式解明と難聴治療に
       よる認知症予防のトランスレーショナル研究」