教授挨拶

獨協医科大学医学部麻酔科学講座についてご紹介いたします。 栃木県南部に位置する獨協医科大学病院は全国にある80大学付属病院中、第7番目の規模を誇る大きな医療施設です。この医学教育、初期後期研修も行う医療施設でわれわれは麻酔、ペインクリニック、緩和医療、 東洋医学、痛みの基礎研究のすべての分野に関して取り組める環境にあることが大きな特徴といえるでしょう。もちろん、これらの分野において、われわれは臨床、研究のみでなく、教育にも力を入れています。以下に、簡単に(?)当教室の仕事について紹介させていただきます。

【麻酔】 当院の手術室は15室あり、25名の麻酔科医によって手術患者さんが安心して手術を受けられるよう努めています。平成29年度の手術件数は9551件、全身麻酔を中心とした麻酔科管理の手術件数が6165件であることから、手術の65%にわれわれが関わっていることを理解してもらえると思います。麻酔は一般外科をはじめ、各科の手術の麻酔を経験でき、なおかつ、栃木県には循環器医療センターがないことから開心術の症例が多く、脊椎脊髄疾患を専門とする医師が多いことから高度な神経領域の麻酔を経験することができます。麻酔手技はそれこそ全身麻酔、脊髄くも膜下麻酔、硬膜外麻酔はもちろんのこと、超音波ガイド下神経ブロックや術中経食道心エコー(認定医が3人います)といった先進的な麻酔管理も「医療の安全が第一」という基本理念の下で行われています。今後は北関東の交通網の整備が進むことで北関東医療圏の基幹病院として広域な連携医療が行えるようになり、われわれの医療はオールマイティでありながらも専門性にさらに特化した新しい段階に入ると考えています。

【痛みの治療(ペインクリニック)・緩和ケア・東洋医学】 麻酔科外来(ペインクリニック)では、難治性の痛みに対して神経ブロック、薬物療法、東洋医学(漢方治療、針治療)、光線療法、理学療法、手術療法などで治療を行っています。対象疾患は腰椎椎間板ヘルニア、帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛、肩関節周囲炎、三叉神経痛、頭痛などで、痛みで苦しむ多くの患者さんの治療に努めています。とくに神経ブロックは当科の(美人)講師が中心となって行い、脊髄刺激療法などの侵襲的治療も行っています。そして、痛みに対するオピオイドをはじめとする薬物療法に関しては当教室が日本の薬物療法を牽引していく覚悟で基礎研究と臨床研究に取り組んで発表を行い、その成果は確実に実を結びつつあります。加えて、漢方治療(東洋医学)は当大学では専門外来はなく、東洋医学専門医資格を持つ麻酔科が講義と診療を担当しています。全国的に見ても珍しい体制ではないでしょうか。 がんの痛みの緩和も非常に重要な課題でありますが、2006年からは当院腫瘍センターで麻酔科医が緩和ケア部門長として専従し、末期がん患者さんの疼痛管理、精神的苦痛などへのサポートを行っています。この領域でもわれわれは当地域のがんセンターと協力して地域がん医療の中心となるべく臨床に勤しみ、緩和ケア医の育成にも力を注いでいます。  私達は絶えず自己研鑽に努め、麻酔という専門職を通じてチーム医療の一員として地域医療に貢献したいと考えています。麻酔、ペインクリニック、緩和医療、東洋医学に興味があり、私達の考えに賛同していただける医学生や若い医師がいましたら、ご連絡ください。
麻酔科学教室 教授山口 重樹濱口 眞輔