本教育課程

2021年度認知症看護認定看護師教育課程(B課程)について

認定看護師教育課程は、特定の看護分野における熟練した看護技術及び知識を用いて、あらゆる場で看護を必要とする対象に、水準の高い看護実践のできる認定看護師を社会に送り出すことにより、看護ケアの広がりと質の向上を図ることを目的としています。
認定看護師とは、ある特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を有する者として、日本看護協会の認定を受けた看護師をいいます。
認定看護師制度をリーフレットで紹介しています:「認定看護師ってどんな看護師?」

役割

個人、家族及び集団に対して、高い臨床推論力と病態判断力に基づき、熟練した看護技術及び知識を用いて水準の高い看護を実践する。(実践)
看護実践を通して看護職に対し指導を行う。(指導)
看護職等に対しコンサルテーションを行う。(相談)

(目的)

  1. 認知症看護分野において、個人、家族及び集団に対して、高い臨床推論力と病態判断力に基づき、熟練した看護技術及び知識を用いて水準の高い看護を実践する能力を育成する。
  2. 認知症看護分野において、看護実践を通して看護職に対し指導を行える能力を育成する。
  3. 認知症看護分野において、看護職等に対しコンサルテーションを行える能力を育成する。
  4. 認知症看護分野において、多職種と協働しチーム医療のキーパーソンとしての役割を果たせる能力を育成する。

(教育理念)

急性期病院から地域までのあらゆる場において、認知症の人に対し、高い臨床推論力と病態判断力に基づいて、認知症の病期に応じた質の高い生活の継続に必要な支援を多職種と協働しながら実践し、保健医療福祉に貢献できる認知症看護認定看護師を育成する。

(期待される能力)

  1. 高い臨床推論力と病態判断力に基づいて、認知機能障害及び身体疾患の合併による影響をアセスメントし、治療的援助を含む健康管理を行うことができる。
  2. 認知症の発症からエンドオブライフまで、住み慣れた地域あるいは在宅で生活を継続できるよう、症状マネジメント及び生活機能の評価と支援、家族支援を行うことができる。
  3. 認知症の人がもてる力を発揮できるよう生活・療養環境を調整することができる。
  4. 認知症の人の権利を擁護し、あらゆる場において認知症の人の意思が適切に反映されるよう、意思決定能力の評価、人的・物理的環境の整備、認知機能に応じた配慮ができる。
  5. 地域包括ケアシステムにおいて、多職種と協働しチーム医療のキーパーソンとしてケアサービス推進の役割を果たすことができる。
  6. 認知症看護の実践を通して役割モデルを示し、看護職への指導を行うことができる。
  7. 認知症看護分野において、看護職等に対し、相談対応・支援を行うことができる。

(コアとなる知識・技術)

  1. 認知機能障害及び身体症状をアセスメントし、認知症の行動・心理症状(BPSD)及びせん妄の予防と緩和を含めた症状マネジメントができる知識・技術
  2. 認知症の病期に応じたコミュニケーション障害に対して、適切なコミュニケーション手段を提案できる知識・技術
  3. 認知症の人の特性を踏まえた意思決定支援ができる知識・技術
  4. 認知症に関わる保健医療福祉制度に精通し、多職種や市町村等と連携し、協働できる知識・技術
  5. 生活機能を評価し、認知症の人の生活拡充に向けた支援及び生活・療養環境調整ができる知識・技術
  6. 介護状況と家族関係をアセスメントし、認知症の人の家族へ心理的・社会的支援ができる知識・技術
  7. 身体所見から病態を判断し、抗けいれん剤の臨時の投与、抗精神病薬の臨時の投与及び抗不安薬の臨時の投与ができる知識・技術

職業実践力育成プログラム(BP)

 獨協医科大学SDセンターの認知症看護認定看護師教育課程(特定行為を組み込んでいる教育課程)は、文部科学省から「職業実践力育成プログラム(BP: Brush up Program for professional)」に認定されました。

(2020.12.23公示)

1.「職業実践力育成プログラム(BP)」とは

 大学・大学院・短期大学・高等専門学校におけるプログラムの受講を通じた、社会人の職業に必要な能力の向上を図る機会の拡大を目的として、大学等における社会人や企業等のニーズに応じた実践的・専門的なプログラムを、文部科学大臣が認定するものです。

2.プログラムの概要

(1) 課程名:認知症看護認定看護師教育課程(特定行為を組み込んでいる教育課程)

(2) 期 間:9か月

(3) 修得資格

  • 日本看護協会が認定する認定看護師(認知症看護)の受験資格
  • 厚生労働省が認定する特定行為研修2区分の修了

(栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連)
(精神及び神経症状に係る薬剤投与関連)

(4) 社会人の受講しやすい工夫:集中講義、本学実習

(5) プログラムの特徴

 本課程では、特定行為研修区分別科目2科目を含む、共通科目14科目、認定看護分野専門科目7科目、演習・実習で構成された797時間を、e-learningや対面授業、臨地実習など9カ月にわたって学修します。
 認知症看護は、高齢化が進む社会で、医療の現場だけでなく福祉など生活の様々な場面で求められている分野です。認知症の人に“安心”を提供できる高度な専門知識と実践能力を有した認定看護師の育成と看護の質の向上を目指しています。

教育訓練給付制度(専門実践教育訓練講座)

 獨協医科大学SDセンターの認知症看護認定看護師教育課程(特定行為を組み込んでいる教育課程)は、厚生労働省の「専門実践教育訓練講座」に指定されました。

(指定期間:令和3年4月1日~令和6年3月31日)

1.教育訓練給付制度(専門実践教育訓練講座)とは

 働く人の主体的で、中長期的なキャリア形成を支援し、雇用の安定と再就職の促進を図ることを目的とする雇用保険の給付制度です。
 一定の条件を満たす雇用保険の被保険者(在職者)、または被保険者であった方(離職者)が、厚生労働大臣の指定する専門実践教育訓練を受講し修了した場合、本人が教育訓練施設に支払った教育訓練経費の一定の割合額(上限あり)をハローワークから支給する制度です。

2.専門実践教育訓練での「教育訓練支援給付金制度」とは

 専門実践教育訓練の教育訓練給付金を受給される方のうち、昼間通学制の専門教育訓練を受講しているなど、一定の要件を満たした方が失業状態にある場合に、訓練受講をさらに支援するため、雇用保険の基本手当の日額80%に相当する額をハローワークから支給する制度です。

3.給付金について

 給付金は、専門実践教育訓練を受給している間と、修了した場合、ハローワークから支給があります。
 専門実践訓練の受講中に受講費用の50%、更に、資格取得等をし、かつ修了した日の翌日から一年以内に、被保険者として雇用された又は雇用されている等の場合には20%の追加支給(合計70%、年間56万円)が支援されます。ただし、一定の要件を満たしている方に限ります。

4.支給を受けるためには

 訓練対応キャリアコンサルタントによる訓練前キャリアコンサルティングを受け、ジョブ・カードを作成し、「教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票」などをハローワークに提出する必要があります。また、この手続きは、受講開始日の1か月前までにご自身で行う必要があります。
 詳しくは、以下に掲載する厚生労働省・ハローワークのWEBサイトをご確認ください。本センターでは、個別の受給資格の有無についてお答えしたり、手続きの代行はできません。

研修の様子

講義の様子①
講義の様子②
グループワーク
グループワークの発表
体験①
体験②
ロールプレイ

修了生からのメッセージ

2018年度修了生

認知症看護認定看護師教育課程 一期生
独立行政法人国立病院機構栃木医療センター
菅野 妃穂子

 私は日々看護を行うなかで、認知症の人が自分の思いを上手く伝えられず、看護師もその思いを汲み取ることができず、もどかしさを感じる場面に直面することがありました。そこで、認知症についてもっと知りたい、認知症の人をもっと理解したいという思いが強くなり、認知症看護認定看護師教育課程を受講しました。
 働きながらの研修は、授業や実習など大変なこともありましたが、教員や同じ目標を持つクラスメートに支えられながら貴重な9か月間を過ごすことができました。そのなかで、最も私が大切だと感じたことは、パーソン・センタード・ケアの視点での認知症の人への関わりです。看護師側からではなく、患者の視点でケアを行うことで、安心した療養生活に繋がると思います。研修を終えた今、多忙な日々のなかで実践していくことは決して簡単なことではありませんが、認知症看護認定看護師として大切だと思うことを実現できるように取り組んでいきたいと思います。

認知症看護認定看護師教育課程 一期生
医療法人社団圭春会 小張総合病院
大滝礼子

 私は急性期の病棟に入院する認知症の人が、安心して入院生活を送れるように、認知症看護を学びたいと思い、認知症看護認定看護師教育課程を受講しました。 教育課程では、認知症の人に寄り添い、その人が生きてきた歴史を重んじ、「その人らしさ」を看ていく大切さを学ぶことができました。また31名の仲間と共に話し合ったり悩んだりしたことはとても貴重な時間であり、今後の看護実践の原動力になったと思っています。
現在は、病院全体に認知症看護を伝え、認知症ケアチームの立ち上げに向けて活動しています。認知症看護認定看護師としてさらに研鑽していきたいと考えています。

認知症看護認定看護師教育課程 一期生
地方独立行政法人佐世保市総合医療センター
竹下 良信

 私は、長崎県佐世保市から栃木県の獨協医科大学SDセンターの認知症看護認定看護師教育課程を受講しました。一期生は研修が金曜日と土曜日だったため、飛行機や高速バスなどを利用して通いました。毎週の通学は心配でしたが、大学の併設のホテルも利用しやすく、担当教員や受講者仲間のサポートで、無事に9ヶ月間の研修を終えることができました。
臨地実習中は何度も挫折しそうな気持ちにもなりましたが、認知症看護認定看護師である指導者さんの支援や、研修生同士の励ましで乗り越えることができました。 研修は辛いこともありましたが、決して一人じゃないので、授業後の交流の時間も楽しんで、大切な仲間と協力して頑張ってください!!

認知症看護認定看護師教育課程 二期生
獨協医科大学埼玉医療センター
高村 香織

 私は毎日片道2時間半かけてSDセンターに通い、家族や職場スタッフの方々の協力があって9か月間学ぶ事ができました。また、一緒に学んだ研修生や教員、指導者の方々との出会いが今の私の支えとなっています。研修中は、認知症の人の思いや行動の理由など知れば知る程、今までの自分の看護を恥じる時もあり、決して急性期だからとか身体管理が優先だからと言ってはいけないと感じた日々でした。
認知症看護は周囲の人々の理解が大切です。そして支援の幅は多岐に渡り、実践してみないと結果が見えてこない難しさもあります。
現在、認知症ケアチームの一人として活動しており、毎週のケア回診でスタッフに「困っている事はありますか?」と問いかけると、多くの声が聞かれます。認定看護師が現場に赴く事が現場の困りごとに直接関われるのだと実感している日々です。今後も高齢者が安心して過ごせる環境づくりのためにスタッフと一緒に学び続けていきたいと思います。

認知症看護認定看護師教育課程 二期生
茨城県立中央病院
市毛 智佳子

 私は、教育課程において、認知症の人のアセスメントやケアの方法などの知識を深めることができました。また、認知症のご本人や家族会、地域の方々と実際に触れ合うことができ、住み慣れた地域で暮らすことの大切さを知りました。これらの学びは、看護を提供するための糧となる貴重な経験でした。今後、「その人らしさを尊重する」「話や行動を焦らせない」「ゆっくりと話を聴く」この言葉を忘れずに看護したいと思っています。
現在、一般病棟で高次機能障害の方や認知機能低下のある方の看護をしています。患者さんは、環境の変化に戸惑いを感じやすいため、その人にとって心地よい環境・安心できる環境を考えながら療養環境を整えています。また、患者さんのできることを、療養生活の中で活かせるように支援しています。その他、看護実践で困った時の相談や認知症看護の学習会開催、地域においては、認知症の方のかかわり方を知って頂く出前講座など、本課程の学びを活かして活動をしています。

認知症看護認定看護師教育課程 二期生
独立行政法人 地域医療機能推進機構
うつのみや病院
久保田 寛子

 私が認知症看護認定看護を目指したきっかけは、当院にSDセンター1期生が実習に来たことです。それまで認知症の患者さんに対し知識も薄くあまり興味がありませんでした。認知症の方の関わり方、接し方でこんなにも変わることができるのだと感動し、自分も学びたいと思い受講しました。
 教育課程では認知症の基礎から関わり方、地域連携、指導・相談、薬理学など様々なことを学ぶことができました。毎日研修生の仲間と図書館に行き、夜遅くまで勉強し、話し合ったり悩んだり、弱音を吐くこともありましたが、教員や研修生のサポートで、無事に研修を終えることができました。
現在、私はコロナ病棟に勤務しています。コロナ患者も高齢者が多く、認知症を患っている方がたくさんいます。閉鎖された部屋で過ごす高齢者の認知機能は低下するばかりです。また、急性期病棟でも面会制限が続いていて認知機能の低下が見られます。スタッフからの相談を受け、患者さんが“その人らしい入院生活”が送れるよう認知症者を取りまく様々な環境を整え、QOLの維持・向上を図る看護を目指し日々格闘しています。
私にとってSDセンターでの9ヶ月間は、辛く苦しくもありましたが、これまでの人生の中で最も多くの方と出会い、刺激を受け成長した濃密な期間でした。今、認知症看護認定看護師を目指している皆様も光り輝くよう心から応援しています。