先輩医師へのインタビュー

研修医

研修医・平成25年卒
永島 祐美

獨協医科大学で初期臨床研修を行った後、レジデントとして耳鼻咽喉・頭頸部外科に入局しました。耳鼻咽喉科は聴覚や嗅覚、会話や摂食など患者さんのQOLに大きく関わるため、とても重要性の高い領域だと感じました。また赤ちゃんからお年寄りまで幅広い年齢層の患者さんを相手にし、診療領域もとても広く、内科的側面と外科的側面を持っています。手術も、顕微鏡を用いた耳の微細な手術から頭頸部のダイナミックな手術まで様々です。同じ医局の中でも先生方の専門分野はそれぞれで、話を聞いているととても面白いです。そんな耳鼻咽喉科に興味をもち、入局を決めました。

耳鼻咽喉科は、普段なかなか関わる機会が少ないと思いますが、少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。

研修医・平成24年卒
阿久津 誠

皆さんはじめまして。レジデントの阿久津 誠と申します。

平成26年(2014年)4月に当科に入局し、早くも半年が経ちました。耳鼻咽喉・頭頸部外科はその文字が示すとおり耳・鼻・喉を専門とする科ですが、内科的な部分もあれば外科的な部分もあり、その守備範囲は文字以上です。入局するまでは耳鼻科といえば町医者的なイメージでしたが、実際入局して働いてみると“こんな事もするんだっ!!”という驚きの連続です。具体的に列挙するとキリがないので省略しますが…(笑)。

耳鼻咽喉科のメインはなんといっても手術です。幸いな事に当科は春名教授、平林教授をはじめ、各領域において専門性の高い手術がされており症例数も豊富です。しかも上の先生方の指導体制もしっかりしており、若手医師にとっては最高の環境が整っていると思います。また外来診療や専門外来なども早い段階から開始でき、困った症例や悩ましい症例もすぐに相談できる為、診療スキルもどんどん成長していきます。私自身は千葉県出身であり都内の大学病院への就職もかなり考えましたが、今となっては当科に入局して正解だったと考えています。

外科系診療科ですのでやっぱり、朝早くから夜遅くまで仕事をする事も多々ありますが毎日とても充実しています。何より日々少しずつではありますが、手術・手技が上達していくのを実感できると“次はここまでできるように勉強しよう”とか“ここを少し改善してみよう”など自身のモチベーションもあがります。栃木県にはゴルフ場や温泉が数多くある為、休みの日には趣味のゴルフを堪能したり温泉に行って疲れを癒したりしています。

学生時代の印象だと耳鼻咽喉科は少しとっつきにくい診療科かもしれないですが、研修医・学生の皆さんには1ヶ月でもいいので研修してもらい、耳鼻科の奥深さを体感して興味を持ってもらえれば幸いです。入局して一緒に働く仲間が増える事を期待しています。

女医

平成18年卒
吉田智恵

【現在の仕事内容】
耳鼻咽喉科にて外来診療を行っています。
資格:日本耳鼻咽喉科専門医取得
専攻:耳鼻咽喉科学一般、鼻副鼻腔、嚥下
【当科・当医局の魅力】

耳鼻咽喉科の分野では、お年寄りから子供まで幅広い年齢層の患者さんを診ることができます。また、初診から診断、治療に関しても外来診療、手術、術後管理まで、当科の診療範囲は広く、他科ではほとんど診ることができない分野で、専門的な知識や技術を身につけることができる点もまた、魅力の一つだと思います。

そして手術も行える科でありながら、外来治療のみで改善する疾患も多く、手術に興味がありながらも、女性には体力的に厳しいのではないか、結婚・出産後も仕事を続けていけるのだろうか…と悩んでいらっしゃる方にもおすすめです。また、耳鼻咽喉科領域は、文字通り耳、鼻、咽喉頭、聴覚やめまいなど多岐にわたるため、学生や研修医の時には深く学べていない分野が多く、不安に感じるかもしれませんが、各分野に専門の先生方がおり、外来、病棟、手術と、熱心に指導してくださいます。

【出産前後の状況や苦労】

現在二人の子供がおります(3歳、6か月)が、共に里帰り出産でした。
一人目の妊娠の際は妊娠35週まで働いていましたが、元々手術も好きで、産休に入る直前まで数多くの手術診療も行っていました。
一人目の産後は7ヶ月で仕事復帰しましたが、母乳育児をしていたため、保育園で必要な分の搾乳、離乳食作りもしなければならず、初めの数か月は本当に大変でしたが、子供も徐々に成長し、保育園も自宅近くに転園できたこともあり、体力的にも少しずつ楽になりました。
一人目の出産が諸事情により緊急帝王切開での出産だったため、二人目の妊娠では担当医師より早期からの産休、里帰りを指導され、妊娠31週で産休に入りました。

現在、主人、私ともに両親が遠方におり、子供の緊急時対応は私たちしかできないため、当直やオンコール業務は難しいと考え、基本的には外来診療メインで勤務しています。病児保育にも登録していますが、実際子供が病気になった際にも必ず利用できるわけではないため、私自身も医局の先生方にご迷惑をおかけしたことがありました。しかし当医局の先生方は、私が育児中であることを理解してくださり、緊急時には仕事もサポートしていただき、感謝しております。

【女医さんへのアドバイス】

全国的にも耳鼻咽喉科に従事する女性医師は多いのですが、その一因として、当科のように結婚・出産後も働ける場がきちんとあるということが挙げられると思います。
妊娠、出産をするとなると、どうしても医師としてのキャリアは一時的には途切れてしまいますし、仕事と育児、家事の両立はやはり大変なことも多いです。しかし、子供は本当に可愛いですし、子供がいてくれることで日々喜びや幸せも感じています。出産することで、その後の仕事面でのデメリットがないとはいえませんが、せっかく女性として生まれてきたのですから、医師として若いうちからしっかり勉強して知識や技術を学ぶとともに、個人的には是非、私たち女性にしか味わえない喜びも感じてほしいなぁと思っています。

耳鼻咽喉科の分野に少しでも興味がある方は勿論のこと、子供から大人まで幅広い年齢層の患者さんを診療したい方、手術に興味がありながらも体力面や結婚・出産後の働き方に不安もある先生方、是非私たちと一緒に働いてみませんか?

医局員

平成3年卒
深美 悟

【Doctor Xより】

我が耳鼻咽喉・頭頸部外科学教室では,耳・鼻・口腔・咽頭・喉頭・頸部における手術的治療や耳鼻・頭頸部の炎症疾患・難聴・めまいに対する内科的治療を積極的に行っています。年間の手術件数は毎年800件を超え,他大学に引けを取らない症例数を有しています。以前,耳鼻科に興味のある研修医が,「僕は手先が器用でないから・・・」という理由で,他の科に入職してしまいました。確かに耳鼻科は,細かなところを色々な器具や内視鏡を用いて手術をすることが多いですが,日々の先輩方の手術見学や指導によって,経験を積み重ねていくとやがて上手な手術ができるようになります。私も手先が器用な方ではありませんが,今では問題なく手術を行っています。本当に手先の器用な外科医はそれほど多くないのではないのでしょうか。漢字では,内科は「内を診る科」で外科は「外を診る科」と書きますが,それは少し違うと思います。外科系では,内科系と違い,実際に手術を行うことで直接病変を観察することができるので,内を診ているといえます。数多くの疾患を経験することにより「心の目」が養われていきます。すると,氷山の一角である一カ所の所見をみながら諸検査を含めて総合的に考えていくと,どのような病態でどのような治療が必要なのかがわかってきます。手術によって直接疾患を治せること,「心の目」が養われてその後の診療に役立つこと,他の科では診断・治療し得ない領域の疾患を診ることができることが外科系の魅力ではないでしょうか。

最近,医療事故に関する報道を目にする機会が増え,研修医が外科系に就職せず,内科系に就職する医師が増えています。このままでは将来手術ができる医師が少なくなってしまうのではないでしょうか。実際,適切な手術を行っていて,トラブルになるケースは皆無で,将来的に外科医は今以上に必要とされるでしょう。

近年,新研修医制度の影響で,地方の医科大学の卒業生が母校を離れ,都市部や地元で研修を行う傾向があります。ある学生は,大学病院ではCommon diseaseが診られないので,外に行って研修すると話をよく耳にしますが,地方の大学病院はCommon diseaseだらけです。都会の病院で研修し,確かに都会で生活したいという気持ちは誰にだってあると思います。但し,医師が都市部に集中すれば,十分な指導が受けられず,若い医師が経験できる症例も半減し,一人前の医師になるまでに地方の病院よりも時間がかかってしまうと思います。その点,当科では入局早期から実践を積むことができるメリットがあります。若手の医師が,春名主任教授の副鼻腔手術や平林教授の頭頸部手術の直接的指導が受けられることは,通常考えられないのではないでしょうか。また,生活面でも都会の方が住居費が高く出費が多くなり,しかも病院の有給枠も限りがあり無給で働く医師が多く,地方の方が経済的に余裕が生じます。

例え,就職した後に本当に手術が嫌いだとわかった場合でも,急性中耳炎,咽喉頭炎,成人や小児難聴,言語発達遅延,嚥下障害,音声,めまい・平衡障害の診断,内科的治療を中心に学んでいくという選択肢もあります。

このように耳鼻咽喉・頭頸部外科では脳・眼・頸椎を除く頭頸部領域の幅広い範囲を扱う外科かつ内科であり,聴覚・味覚・嗅覚・平衡覚の4つの感覚器を扱う科です。以前から耳鼻科は開業しやすい科であり,耳鼻咽喉科領域の患者さんは非常に多く,開業後も生活に困ることは全くありません。耳鼻咽喉・頭頸部外科に少しでも興味があるという医学生・研修医の皆さん,われわれと一緒に仕事をしていきませんか。きっと,仕事をこなしていくうちにどんどん耳鼻咽喉・頭頸部外科の面白さが理解できるようになるでしょう。

留学体験紀

平成2年卒
金谷 洋明

【留学先の紹介とそこの雰囲気など】

米国ペンシルベニア州、ピッツバーグ。ピッツバーグ大学附属癌研究所 University of Pittsburgh Cancer Institute (UPCI)。ピッツバーグは北米大陸の東部に位置する地方都市です。旭川と同じくらいの緯度にありますが、気候的には日本の四季のような変化が見られます。治安も良く、同じ米国のニューヨークやワシントンなどと比べると、何となく時間の流れがゆったりと感じられ、非常に住みやすい街です。かつては鉄鋼で栄えた街ですが、近年では多数の教育機関が存在する学究の街へと変貌を遂げています。商業的にも成功しており、最近のリーマンショックでは、失業者がほとんど出なかった唯一の街といわれています。研究室のボスは女性で、Prof. Whitesideという元気のよい方です。日本人の間では「おばちゃん」と呼んでいました。ボス以下、常時5~6 人の留学生(医師)が在籍し、他にテクニシャンが十数名おりました。比較的規模の大きな研究室でした。雰囲気はとても良く、皆で lunch によく行きました。また、近くの Eye and Ear Institute には山藤先生の研究室もあり、耳鼻咽喉科の先生たちとの交流も非常に楽しいものでした。

【留学先を選んだ理由】

理由になるかどうかはわかりませんが、私以外に留学希望者がいなかったので、私に御鉢が回ってきた(もちろん、良い意味で)と聞いています。

【留学経験で得たもの】

外国での生活がいかに大変かということ。そして日本という国がとても良いところであることを再認識しました。日本を離れてみて解ることがたくさんあります。

【留学を検討してる方へのメッセージ】

留学は「留学したい!」というモチベーションが第一です。それにチャンスと思い切りも大切です。留学期間は2年くらいがちょうど良いと思います。2年程度、臨床にブランクが出来てしまいますが、長い医師の人生においてはあまり関係ないと思います。

平成6年卒
中島 逸男

《ドイツ留学》 マンハイム大学

2005年(平成17年)4月からの2年間、ドイツ・マンハイム大学耳鼻咽喉科に留学する機会を得ました。

ポスドク留学は多くの場合、英語圏の大学や研究施設が選ばれることが多いと思いますが、ドイツは40数年ほど前にマンハイム近郊のホンブルグ・ザール州で生まれ、幼少期から中学校卒業まで過ごしたわたしにとって「第二の母国」です。それ故、ドイツ留学の話を教室の平林教授よりいただいたときには返事に迷いはありませんでした。

マンハイムは観光地ではないため、用がなければ誰も行かないような特徴のつかみにくい町なのですが、ほぼドイツ中央に位置し、ドイツ古城街道(マンハイム~チェコ・プラハ)の基点となっています。人口が約32万人と宇都宮市に比べ、ひとまわり小さいものの、トルコ人やロシア人、イタリア人をはじめ世界100カ国以上の国々からの出身者で構成されていました。子供達の通った幼稚園・小学校ではおよそ70%が外国人・移民でしたので、さながらインターナショナル・スクールのようでした。街自体は円形の環状道路のなかに碁盤の目のような道路が交差した形状をしており、ドイツの他の街に比べ一線を画した趣でした(図1)。

大学病院は市街地からそう遠くないライン川の支流であるネッカー川沿いにあります(写真1)。ヨーロッパでも最大規模の終夜睡眠ポリグラフ専用検査室を有する病棟はその中心にあり、日夜約20 名の患者の検査・診療を行っていました。主任教授であるProf. Dr. Karl H. Hoermann(Hörmann)のご尽力により、1993年に病棟の備品置き場をベニヤ板で囲い、わずか2床からはじめた睡眠検査室が1998年には耳鼻咽喉科としてはじめての認定検査施設の承認を受け、教授のみならず医局員全員が睡眠障害に対して高いモチベーションを持っているのには驚かされました。

病院内では日本の医師免許が必要十分なドイツ語会話能力などの一定条件のもとで効力を有し、臨床研究を主体とした研修が可能なこともあり、多くの患者さんに接する機会がありました。事実、初日からポケベル、白衣を渡され、他のレジデントらと救急・緊急時の対応、各部署の主要な内線番号、救急カートの位置、気管切開セットの配置までを暗誦するように指示を受けました。たとえ客員(Gastarzt)といえども、医師である以上は病院内の最低限の緊急装備、緊急時連絡等は熟知しておく必要があるとのことでした。むろん客員の立場では夜間の当直勤務や週末勤務は免除されますが、多くの客員医師が訪れるマンハイム大学では基本的な研修プログラムが出来ており、通常の勤務を基本とした体制のもとに各自に応じた臨床研究を行っていました。予てより睡眠障害全般の検査、診断、治療を習得し、それらをもとに臨床研究を進める計画であり、症例の豊富なマンハイム大学は理想的な環境でしたが、すべて各々の自主性に任されるので、明確な目的と倫理委員会などに提出する書類作成に必要な最低限の語学能力なくしては一歩も前に進まず、戸惑うことも少なからずありました。

海外で生活していると宗教や風俗、慣習の相違から「驚きの新発見」から「不愉快な体験」まで一通り経験しますが、ドイツ留学期間中には過去に前例のない医師のストライキも経験し、一医療人としてその意義が理解できない場面もありましたが、常に改革を厭わない彼らの合理的かつ効率的な医療内容は見習うに値しました。それでも本邦と同様に、医療訴訟の増加や煩雑な事務的仕事の多さから多くの医師が開業指向ですが、より有利な待遇を求めてドイツ国外に転職する医師が、少なくないことに驚かされました。

多くの日本人の目はアメリカなどの英語圏に向けられていますが、ドイツにおいても医療の現場に深く関わることで、日本では決して経験のできない体験ができたと自負しております。
若干歳を喰って日本から押し掛けてきたこのGastarztと親しく接してくれた全ての同僚たちに、そしてこの留学の機会を与えて下さいました故馬場廣太郎前教授、春名眞一、平林秀樹両教授をはじめ同僚先生へ深謝いたします。ありがとうございました。


  • マンハイム大学附属病院全景

  • マンハイム・Mannheim見取り図