研究内容

研究

診療・手術においては、各分野のエキスパートとして質の高い技術を習得できる体制を整えている一方で、豊富な臨床データを生かし、日常の診療で生じた疑問を解明する視点からの研究を行っています。基礎研究については、医員室の隣にラボを設置し、研究機器の充実に努め、「診療が終わって、すぐ実験のできる環境」を整備しています。

1鼻副鼻腔領域

世界に先駆けて好酸球性副鼻腔炎の疾患概念を報告し、本邦の鼻科学の中心的存在である春名眞一主任教授の下で上気道から下気道までを対象として上気道疾患の代表である副鼻腔炎、下気道疾患の代表である気管支炎・気管支喘息の関わりを研究しています。また、難治性疾患である好酸球性副鼻腔炎治療についての基礎的研究では、大学院生を中心に形態学的、免疫学的な検討を精力的に行い、その発症メカニズムの解明を進めています。

具体的には以下のような研究テーマがあり、

  • 嗅粘膜障害における活性好酸球の関与
  • 副鼻腔疾患に対する治療効果の検討 -鼻呼気NO(一酸化窒素)の測定を中心に-
  • 好酸球性副鼻腔炎患者に対するケナコルト®局所投与による治療効果の検討

これらの研究成果の一部は当教室の今野渉らによって「局所ステロイド処置による好酸球性副鼻腔炎(ECRS)術後の再燃抑制効果」としてまとめられ、2017年の日本鼻科学会会誌優秀論文賞に選出されています。
さらに国内外の大学とも共同研究を進めています。金沢医科大学耳鼻咽喉科とは「感冒後嗅覚障害に対する当帰芍薬散とメコバラミンによる治療効果の比較検討」を進めているほか、米国のスタンフォード大学耳鼻咽喉・頭頸部外科と「International Sinonasal Disorders and Regeneration(和訳・副鼻腔疾患の病態解明と再生に関わる研究)」の国際共同研究をしています。
その他、これまで地元企業のマニー社とともに鼻中隔縫合機器のセプタムスティッチ®や鼻副鼻腔手術用のマニー ENTナイフ®を開発しました。

2アレルギー領域

国内でも有数の長期に蓄積されたスギ花粉の定点観測データを元に、疫学的研究、環境要因の研究を行い、精度の高い花粉症の疫学的な調査や花粉の飛散量予測ができるようになりました。
また、これまで鼻アレルギー診療ガイドラインの刊行に作成段階より関わり、全国規模のスギ花粉症有病率の疫学調査を実施いたしました。

3睡眠呼吸領域

平成18(2006)年にセンター化され、脳神経内科(宮本雅之教授(2014年より看護学部教授拝命)、鈴木圭輔教授(2020年より脳神経内科主任教授拝命))、心臓・血管内科(有川拓男准教授)と共に病院の中央部門の一つとして診療・研究を横断的に進めています。耳鼻咽喉科領域では内圧センサーを用い、鼻呼吸障害による睡眠中の上気道の形態変化を客観的に評価しているほか、小児睡眠呼吸障害例においては、扁桃組織に着目し、その肥大するメカニズムの基礎的研究を行っています。

現在は以下のような研究テーマがあり、

  • 小児睡眠時無呼吸障害に対するアデノイド切除後の再増殖に関する検討
  • 耳鼻咽喉科領域における遠隔医療を用いた双方向手術指導についての検討

さらに国内の大学、病院とも「日本人成人の音響鼻腔計測検査による基準値作成のための研究」の共同研究を進めています。

4癌関連領域

頭頸部癌培養細胞を用いて、主に癌の浸潤メカニズムについての研究を行なっています。

マニー社と共同開発したセプタムスティッチ®、ENTナイフ®

研究室にて

(文責 中島逸男)