検査・治療の紹介
虚血性心疾患とPCI(冠動脈インターベンション)について
心臓と冠動脈と虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)
冠動脈は心臓の筋肉(心筋)に血液を送るために、心臓の表面にへばりつくように走行しながら、心臓の表面から心筋の中に細かく枝分かれしながら入りこんでいって、心筋細胞に酸素や栄養を届けている血管です。心臓は1日におよそ10万回、生涯休むことなく収縮(運動)し続けているので、心筋には常に栄養や酸素が供給されなくてはなりません。だから、動脈硬化が進行して心臓表面にある冠動脈が狭窄や閉塞を起こしてしまうと、心筋まで血液が届けられなくなり、その結果心筋は動かなくなります。心筋が動かなくなると全身に血液が届けられなくなるので生命の維持に関わってきます。ですから患者さまの命を守るために適切な治療を遅れることなく行わなくてはなりません。
PCI(冠動脈インターベンション)
冠動脈の狭窄や閉塞を治療するためには、手首や鼠径部から動脈の中にカテーテル(細いチューブ)を冠動脈の入り口まで運んでいき、先端にバルーン(風船)がついた細いカテーテルや、そのバルーンにステント(薄い金属でできた筒状の金網)を巻き付けて持っていって、狭窄や閉塞している場所を、血管の内側から拡張して滞った血流を再開させます。この治療をPCI(冠動脈インターベンション)といいます。
狭心症と心筋梗塞は命に関わります
冠動脈に狭窄があると仕事や運動した時に心筋に充分酸素や栄養がとどかないので、心臓は痛みや圧迫感として危険信号を知らせてきます。この症状を狭心症といいます。また冠動脈が閉塞してしまうと、再開通しない限り胸の痛みや圧迫感が続いていき、そのままにしておくと数時間で心臓の筋肉が壊死してしまいます。この心筋が壊死してしまうことを心筋梗塞と言います。冠動脈の狭窄は、徐々に知らず知らずのうちに進行している場合が多いのですが、閉塞はある日突然に起こります。患者様にとっては、まさか心臓の痛みとは思いもよらず、病院を受診するのが遅れてしまうことも珍しくありません。心筋梗塞は初めの2時間以内に心臓麻痺を起こすことが多いので致死率の高い病気として恐れられています。
栃木県の虚血性心疾患、急性心筋梗塞と闘っています。
本学のある栃木県は全国と比較して急性心筋梗塞の死亡率が高いとされています。心筋梗塞による死亡を予防するためにあきらかなのは、心筋梗塞が起こってから3時間以内にカテーテル治療が行われること、あるいはカテーテル治療ができる病院に来て90分以内に治療が行われることです。これを実現するために我々は30年以上前から、胸部症状のある患者さまを24時間なるべくお断わりせずに診療を続けてきました。
最新で合併症の少ない冠動脈インターベンションを実践しています。
狭心症に対する冠動脈インターベンションの黎明期には医師が冠動脈造影検査で強い狭窄があると、片端からバルーン拡張しステントを入れて治療しておりました。つまり見た目の狭窄を医師が独自に判断して治療をしておりました。しかしこの30年の医学の進歩と様々な検査機器の導入によって、本当にすぐにカテーテル治療が必要な狭心症かどうかを鑑別することができるようになりました。
当院では冠動脈の内圧を圧センサーで測定し狭窄の前後で内圧低下を評価(FFR:冠血流予備比)して、医師の見た目だけでなく本当に治療が必要なのかを判断します。ほかにも、IVUS(血管内超音波法)、OCT(光干渉断層法)、血管内視鏡などの画像診断を駆使しています。また画像診断の習熟のため海外留学して経験を積んだ医師たちが、常にアップデートした正しい治療方針に従い、なるべく合併症の少ない冠動脈インターベンションを心がけて治療しております。