研究紹介

左室拡張障害の病態診断法の確立

心不全グループ 責任者 豊田 茂

最近明らかな心不全症状を呈しているにもかかわらず、左室駆出率が保持された症例が心不全の約半数を占めることが明らかとなっております。このような症例の心不全は左室拡張機能の障害が原因とされ拡張不全と呼ばれております。しかしながら拡張機能の解析は臨床的には極めて難しく、また拡張機能に影響する因子も多いため、未だ拡張機能障害の発生メカニズムは明らかでありません。

また心不全を対象とした臨床研究、大規模臨床試験の多くは左室収縮能が低下した収縮不全を対象としており、拡張不全の実態や薬物治療の効果に関するエビデンスはまだ十分とはいえず、有効な治療法は確立しておりません。

私たち心不全グループでは心エコーを用いた新しい非侵襲的拡張機能評価法(1:Color Kinesis法を用いて心内膜面が拡張早期の30%の間に変化した面積を全拡張期に変化した面積で除することで求められるCK-Diastolic Index(CK-DI)や、2:非侵襲的左室スティフネス評価法として左室壁心外膜面の動きに基づく左室伸展性指標(epicardial movement index:EMI=(左室収縮末期自由壁厚―左室拡張末期自由壁厚)÷(左壁収縮末期自由壁厚×心外膜面の変位))、さらにEMIを簡略化した指標DWS(diastolic wall strain)=(左室収縮末期自由壁厚―左室拡張末期自由壁厚)÷(左壁収縮末期自由壁厚))を用いて、臨床的な拡張障害の程度、経過、心血管イベント、心疾患治療薬との関連性を明らかにしていくよう臨床研究を行っております。

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