研究紹介

動脈硬化性疾患の新たな病態診断法の開発

虚血性心疾患グループ 責任者 阿部 七郎

動脈は血液を運ぶだけの単なる導管ではなくひとつの臓器です。そして動脈硬化は、大型から中型の動脈、殊に腹部大動脈や冠動脈など特定の部位におこりやすいことが知られております。

心臓に酸素や栄養分を供給する冠状動脈に動脈硬化がおこり、内腔が狭窄したり閉塞したりすると狭心症や心筋梗塞が発症し生命が脅かされます。これまでの冠動脈硬化症に関する様々な研究成果から多くの有益なデータが得られるようになってきました。特に画像診断の進歩は著しく、冠動脈造影法に加え、血管内超音波法(IVUS)や血管内視鏡により冠動脈硬化病変がより詳細に観察可能になっています。さらに近年、光干渉断層法(OCT)の導入により冠動脈壁の性状が病理所見に近いレベルまで観察可能となってきました。治療面でも冠動脈ステント術などのカテーテル治療の進歩は著しく、多くの患者様の福音となりました。しかしながらカテーテル治療は決して万能ではなく、あくまで対症療法であって冠動脈硬化症の根本的な治療法ではありません。根本的治療法の開発のためにはまだまだ病態、原因究明のための研究を続けて行かねばなりません。

動脈硬化の成立、進展に至る過程ではサイトカインや血管作動物質など多くの介在者がそれぞれ善なり悪なりに役割を演じております。我々は近年開発された血管作動物質のセンサーカテーテルを冠動脈造影検査に応用し、血管作動物質が冠動脈硬化巣に作用するものかを血管内超音波法やOCTなどのモダリティーと併せて検証してゆきたいと考えております。

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