「膵臓超音波内視鏡下穿刺吸引/生検(EUS-FNA/FNB)における病理診断精度の解明と診断方法確立の検討」について
- 研究機関
獨協医科大学病院 病理診断科
- 研究責任者
石田 和之
- 審査委員会
獨協医科大学病院 臨床研究審査委員会
このたび獨協医科大学病院 病理診断科では、膵腫瘍の病気で入院・通院されていた患者さんの試料や診療情報を用いた研究を実施しております。この研究を実施することによる患者さんへの新たな負担は一切ありません。この研究は、人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針に従い、患者さんのプライバシーの保護については法令等を遵守して行います。
なお、本研究は研究に参加される方の安全と権利を守るため、あなたの試料・情報について、本研究への利用を望まれない場合には、担当医師にご連絡ください。
研究の目的と意義
膵臓は様々な腫瘍が発生し、組織型ごとに良悪性の考え方やその評価方法が異なります。組織型は予後など患者さんの経過に反映されることから、病理学的に組織型を確定することは治療選択に重要である。膵腫瘍で最も多いのは浸潤性膵管癌(通常型膵管癌)で、手術後の5年生存率は15~25%と非常に予後が悪い癌です。膵癌が疑われた場合、造影CT、造影MRI、EUSなどの画像診断によって病変を評価した後、ERCPやPETが行われますが、近年では超音波内視鏡下穿刺吸引/生検 [EUS-guided fine needle aspiration(FNA)/EUS-guided fine needle biopsy(FNB)] で病理検体を採取し、病理学的に診断を確定することが推奨されています。これまで膵疾患は病理検体を採取する方法が限られていましたが、EUS-FNA/FNBの実用化により、手術が不要な疾患との鑑別、腫瘍の組織型の確定、悪性度の評価などが可能となり、その結果をもとに治療方針が立てられるようになりました。
膵腫瘤に対するEUS-FNA/FNBはここ15年程で普及した手技です。病理診断は当初は細胞診が行われていました、徐々に組織診も併用するようになり、より検体が多く採取可能なEUS-FNBが普及すると組織診を中心に据えて検体を処理する施設が増加しました。一方で、検体採取時に迅速細胞診を行い確実な検体採取や穿刺回数の減少に貢献するrapid on-site evaluation(ROSE)や、検体の採取状況に左右されない点など、細胞診は実臨床で用いやすく、診断確定に組織診よりも細胞診が有用と感じる場面も多くあります。
本研究では、膵病変に対しEUS-FNA/FNBが行われ、かつその後に膵切除術が行われた患者さんの病理検体を用い、EUS-FNA/FNBの細胞診と組織診、膵切除術の組織診の病理診断とを比較検討します。本研究の目的は、1) 膵EUS-FNA/FNB検体における細胞診、組織診、細胞診と組織診の組み合わせ診断の各々の診断精度を明らかにすること、2) 穿刺部位の違い、EUS-FNAとEUS-FNBの違いが、各々の診断精度にどのように影響を与えているのかを明らかにして、膵EUS-FNA/FNBにおける最も有効な病理診断方法を確立することです。
研究対象者
2008年1月1日~2020年12月31日の間に獨協医科大学病院において、膵EUS-FNA/FNBと膵切除術を受けられた方を対象とし、150名の方にご参加いただく予定です。
研究実施期間
研究全体の期間:本研究の実施許可日 ~ 2024年3月31日
研究方法
本研究は、膵EUS-FNA/FNBと膵切除術で病理診断が確定した病理標本を用いて、後ろ向き観察研究として、獨協医科大学病院病理診断科が行います。細胞診、組織診の病理診断を集積、解析し、どの程度の精度が得られているのか、どのような傾向があるのか、どのような条件で細胞診と組織診を使い分けるのがよいのかを明らかにします。
使用する試料・情報
研究に使用する試料
既に採取されパラフィンブロックとして保存されている膵EUS-FNA/FNBおよび膵切除検体
使用する試料・情報
- 患者背景:年齢、性別
- 膵EUS-FNA/FNBの臨床情報:病変径(画像診断)、部位、穿刺ルート、検体採取方法
- 膵EUS-FNA/FNBの病理診断:細胞診、組織診
- 膵切除検体の病理診断:組織診
エクセルで作成したデータシートに上記データ入力を行います。なお、氏名、住所、獨協医科大学病院患者IDなど、個人を特定できる情報および上記以外の項目は入力しません。
試料・情報の保存と廃棄
獨協医科大学病院病理診断科のインターネットに接続していないパソコンで保管します。研究終了後は、5年間の保存ののちに速やかにデータを削除、破棄します。
研究対象者の研究対象者識別コードリストは、本研究専用の紙媒体を作成し、獨協医科大学病院患者IDとイニシャル(名・姓)および対象者識別コードのみを記載します。なお、研究対象者識別コードリストは電子媒体への変換は行わず、病理診断科で厳重に管理します。
研究計画書の開示
患者さんからの求めに応じ、他の研究対象者等の個人情報等の保護および当該研究の独創性の確保に支障がない範囲内で、研究計画書および研究の方法に関する資料を入手又は閲覧することができます。
研究成果の取扱い
解析結果は、研究対象者に不利益が生じないよう特定の個人を識別することができないように加工されていることを確認し、医学関連の学会および学術誌等で公表します。
この研究に参加することでかかる費用について
本研究は通常診療の医療情報の調査に基づく観察研究であり、研究対象者の費用負担は発生しません。
この研究で予想される負担や予測されるリスクと利益について
本研究は通常診療の医療情報である既存情報と試料の利用により行います。主に予測される研究対象者の負担とリスクは、個人情報の漏洩と新たに試料採取時の負担です。解析に用いられるデータは特定の個人を識別することができないように加工され、個人を推定できないように配慮し厳重に管理することで、個人情報の保護について対策を行います。
知的財産権の帰属について
本研究に係わる知的財産権は、獨協医科大学病院病理診断科に帰属します。
この研究の資金と利益相反について
本研究に係わる研究資金は、獨協医科大学病院病理診断科の研究費で負担します。
本研究に関わる団体との関係は適切であり、私的な利益はありません。また、この研究に参加する研究対象者の権利や利益を損ねることはありません。
問い合わせ・連絡先
この研究についてご質問等ございましたら、下記の連絡先までお問い合わせください。また、あなたの試料・情報が研究に使用されることについてご了承いただけない場合には研究対象とはいたしませんので、2024年3月31日までに下記にお申し出ください。何らかの理由により、あなた自身が研究計画書の閲覧希望、研究の拒否希望を述べることや決定することが出来ない場合には、あなたのご家族やあなたが認める方を代諾者としてお申し出ください。試料・情報の使用を断られても患者さんに不利益が生じることはありません。なお、研究参加拒否の申出が、解析開始又は結果公表等の後となり、当該措置を講じることが困難な場合もございます。その際には、十分にご説明させていただきます。
獨協医科大学病院 病理診断科
研究担当医師 石田 和之
連絡先 0282-87-2130(平日:8時30分~17時00分)
獨協医科大学病院 病理診断科
2022年7月28日作成 第1.0版