四肢の動脈閉塞性疾患について

四肢の動脈閉塞性疾患は、急激に激烈な症状で発症する急性動脈閉塞症と、徐々に進行する動脈閉塞による慢性動脈閉塞症に分かれます。

急性動脈閉塞症

急性動脈閉塞症の多くは、心臓でできた血の塊が血流とともに流れていき、上肢や下肢の動脈に引っかかって栓がつくられてしまうことが原因です。動脈に栓ができると、その周囲の血液が固まり、動脈の広範囲に血液が流れなくなってしまいます。血液が流れなくなってしまった部分は、色調は暗紫色ないし蒼白となり、激しい疼痛やしびれが生じ、感覚が消失したり、動かなくなったりという症状が生じます。
治療が遅れると、組織や筋肉が壊死になってしまうため、早急に治療を行う必要があります。治療は、血栓・塞栓摘除用のバルーンカテーテルを血管内に挿入し、血栓を掻き出す手術(血栓・塞栓摘除術)やバイパス手術を行います。
治療が遅れた場合は四肢の切断が必要になる場合があります。

慢性動脈閉塞症

慢性動脈閉塞の多くは動脈硬化の進行により生じる閉塞性動脈硬化症です。
閉塞性動脈硬化症の症状は、[ 1 ]間歇性跛行[ 2 ]安静時疼痛、潰瘍・壊死に分けることができ、それぞれ治療法が異なります。

  • [ 1 ] 間歇性跛行・・・じっとしていると何ともないけれど、長い距離を歩いたり、階段を上るとふくらはぎがだるくなったり痛くなって歩けなくなり、しばらく休むと症状が消えてまた歩けるようになる。このような症状を間歇性跛行と呼んでいます。間歇性跛行は、腰部での神経圧迫で生じることも少なくありませんが、動脈硬化により下肢の動脈の内腔が狭くなったり、詰まったりして血流障害を起こして生じる場合があります。ほぼ毎回決まった距離の歩行で症状が出現するのが動脈硬化による間歇性跛行の特徴です。このような病態に対する治療の第一は、動脈硬化の原因となる生活習慣病(喫煙、高血圧、高脂血症、糖尿病)の治療をしっかり行うことです。さらに歩行リハビリ、薬物療法(血液をサラサラにする薬物)を行い歩行機能の回復を図ります。適切な治療を行えば、多くの場合症状の進行は抑えられるといわれています。しかしながら、休まずに歩ける距離が短くなり、生活に支障をきたすようになった場合は、カテーテル治療(血管拡張、ステント留置など)やバイパス手術(狭窄、閉塞部を迂回させる経路造る手術)を行います。
  • [ 2 ] 重症虚血肢・・・動脈硬化による下肢動脈狭窄や閉塞が高度になると、歩行しなくても足部が痛んだり、足部が冷たく黒色に変色したり、潰瘍を生じる状態となることがあります。このような状態を重症虚血肢と呼び、足の壊死が急速に進行して下肢を大きく切断しなければならなくなることが少なくありません。下肢の血行再建術(バイパス手術、カテーテル治療など)などを迅速に行い、下肢の切断を最小限に抑える治療を行います。
  1. 術前
  2. 膝上膝窩−前脛骨動脈バイパス術
  3. 術後