小児泌尿器科で 手術する疾患

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停留精巣

停留精巣とは?

精巣が、お腹の中や足の付け根の少し上にあるソケイ管の中などに位置し、陰のう内に降りていない状態を停留精巣と言います。赤ちゃんの5%程度に停留精巣が認められます。3-6ヶ月目ぐらいまでは、自然に治ることがあります。しかし、生後6か月以降になると自然には治りません。停留精巣は、将来 精子の形成に障害がでて不妊症となることがあります。また、大人になってから精巣がんの発症率が、正常の精巣に比べ2-8倍上昇します。

治療

将来、精子に障害がでたり、精巣がんリスクを低くするために6ヶ月から2歳までに固定手術をしましょう。小児泌尿器科では、2泊3日の入院で精巣固定手術をしています。

遊走精巣(移動精巣)とは?

精巣が陰のうの中にあったりなかったりする状態です。遊走精巣は精巣や精巣の周りに異常があるわけでないので、思春期までの経過観察が推奨されています。しかし、停留精巣となることがあるので、思春期までの経過観察を必ず受けましょう。

3ヶ月検診で停留精巣、遊走精巣、陰のう水腫と言われたら小児泌尿器科で診療を受けましょう。

陰のう水腫

陰のう水腫

男の子の陰のう(おちんちんの袋)に水がたまり大きくなることがあります。精巣の機能には異常がでることはありません。子供の場合、鞘状突起(しょうじょうとっき)が開いて腹膜内と交通していることが原因となります。これは交通性陰のう水腫と言って、陰のう(ふくろ)が大きくなったり元に戻ったりします。大きくなりっぱなしのままの場合は、鼠径ヘルニアの嵌頓といって緊急処置が必要な場合があります。
交通性陰のう水腫の場合は、全身麻酔で2泊3日の手術で鞘状突起を切断して塞ぎ、精巣の周りの水がたまらないようにして治します。
手術が必要かどうかは、赤ちゃんと子供の陰のうの専門家である小児泌尿器科に受診して診断をしてもらってください。

真性包茎

真性包茎

子供の陰茎(おちんちん)の皮は、生まれてすぐの男の子はほぼ全て皮が被っています。亀頭が部分的に出ている場合は、尿道下裂の可能性があります。おちんちんの皮を根もとの方に引っ張ってみてみて亀頭が見えてこない場合を真性包茎と言いますが、見えてくる場合は仮性包茎と言い手術は必要ありません。真性包茎でも成長とともに自然に治ってくる場合もあります。また亀頭に皮が強くくっついている場合もありますが、これも自然と治ります。

手術が必要な真性包茎は?

  1. 皮が硬くなり極端に狭くなっている場合を閉塞性乾燥性包皮炎と言いますが、手術をして狭い部分を切り取る必要があります。
  2. 細菌性亀頭包皮炎(赤く腫れ、おちんちんから膿が出る)を繰り返す場合
  3. おちんちんの皮が、おしっこをするときに風船のように膨らむ、またはおしっこの時に痛がる、漏れる場合は手術をした方が良いでしょう

手術の方法

手術は環状切除術やZ形成術がありますが、どちらが良いかは子供の赤ちゃんとおちんちんの専門家の小児泌尿器科医に診断してもらい決めるのが良いでしょう。手術は全身麻酔で行います。手術の前日に入院して、手術の翌日に退院ですので2泊3日になります。

膀胱尿管逆流

膀胱尿管逆流とは?

膀胱尿管逆流は、最も多い尿路奇形の一つで、小児の尿路感染症患者の30−40%に診断されます。
逆流が起こると上部尿路に細菌感染尿が運ばれ、急性腎盂腎炎発症のリスクを増大します。
急性腎盂腎炎になると、半数以上に腎実質欠損という腎臓の傷を認めます。この急性腎実質欠損は、その後の抗菌剤での治療でなくなることもありますが、約40%が腎瘢痕という治らない傷になります。腎瘢痕が増えてしまうと、将来高血圧症になったり、腎機能障害になったりすることがあります。
膀胱尿管逆流の確定診断には、排尿時膀胱尿道造影検査によって逆流の有無を確認しなければなりません。またアイソトープと言われるごく微量の放射性物質を注射して行われる腎シンチグラム検査により、腎臓に瘢痕があるかないか調べます。このような検査は、定期的に行う必要があります。
膀胱尿管逆流があっても、自然に治る子供は少なくありません。重要なことは、しっかりとした検査、治療を続けることで、自然に治る確率が高くなり、もし手術が必要となっても、腎臓のダメージが進行することが防げます。

尿道下裂

尿道下裂

先天性に尿道が不完全な状態で、おしっこの出口(外尿道口)がおちんちんの途中にある病気です。おちんちんが下側に曲がっていたり(陰茎屈曲)、陰のう(袋の部分)に埋まったような状態(埋没陰茎)になっていることも少なくないです。
外尿道口の位置により軽症から重症まで様々ですが、おしっこの出かたに問題があるだけでなく、おちんちんの曲がりが残ると将来の夫婦生活に支障出ることもありますので、小児泌尿器科を専門とする医師に治療を受けましょう。大人になるまで小児泌尿器科または泌尿器科外来を受診し、排尿や性行為に異常がないか診察を受ける必要があります。

治療

1-3歳の間に、おむつトレーニングが始まるまでに尿道形成手術を行います。尿道形成手術の入院期間は4日から10日ですが、尿道下裂の重症度により術式も入院期間も異なります。小児泌尿器科を受診してご相談してみてください。

水腎症

水腎症

水腎症は、おしっこの流れの障害や、膀胱尿管逆流が原因で起こる腎臓の腎盂、腎杯という部分が拡張した状態です。最近では、出生前に産科で行われる胎児エコーで診断されることが多くなりました。まったく無症候性であることも多いですが、尿路感染や腹痛、血尿、蛋白尿で発見されることがあります。水腎症が徐々に悪くなったり腎機能低下が進行する場合は、腎盂形成術といった外科手術の適応となります。

治療

緊急の場合は、尿管ステントの挿入などをしますが、狭いところを切り取って正常な部分をつなぎ合わせる腎盂形成手術をします。当院での腎盂形成手術は、可能な限り腹腔鏡(低侵襲手術)で最小限の傷で行っています。入院日数は7-10日くらいが多いです。当院の小児泌尿器科では100症例以上の治療経験があります。

精巣捻転(急性陰のう症)

精巣捻転とは?

痛みをともない、急激に陰のうが腫れる病気を、急性陰のう症と言います。
緊急手術が必要となることがあり、迅速で正確な鑑別診断が要求されます。原因となる疾患は何種類かありますが、それぞれに好発年齢、特有の兆候がみられます。丁寧な問診と理学所見の聴取により、鑑別診断が可能です。特に精巣捻転症、精巣付属器捻転症、急性精巣上体炎が多く、全体の80%を占めます。
従って、この3つの疾患を正しく鑑別し、適切な治療を行うことがとても重要です。

埋没陰茎

埋没陰茎とは?

陰茎のサイズが正常であるにもかかわらず、陰茎が皮下に埋没している状態です。
原因として、陰茎の皮膚の下にある筋膜や、陰嚢の皮膚が付着する位置の異常のほか、大きな陰嚢水腫や鼠径ヘルニアなどによるものや、過去の包茎手術などの影響によるものが挙げられます。

治療

埋没陰茎の手術の目的は、整容面を改善することの他に、亀頭包皮炎を繰り返したり、排尿時に包皮に尿がたまってしまったり、尿がまっすぐに飛ばずトイレを汚してしまったりするなどの症状や問題を改善するために、亀頭を包む包皮を利用して外観上、陰茎を長くする手術を行います。

その他の疾患

日本小児泌尿器科学会様の疾患説明ページへリンクします。