肝腫瘍:肝芽腫、肝細胞癌、肝良性腫瘍

発生・分類

こどもの肝腫瘍は約60%が悪性で、そのうち90%が肝芽腫または肝細胞癌(成人型肝癌)とよばれる腫瘍です。一方、良性腫瘍の大部分は血管腫で、他に間葉性過誤腫など稀な腫瘍があります。

肝芽腫

肝芽腫は最も多いこどもの悪性肝腫瘍です。男児にやや多く、いずれの年齢にもみられますが、45%は1歳前の乳児期に、80%は3歳までに発症します。肝芽腫の数%に先天性の病気や異常をともなうことが知られています。また、低出生体重児(特に出生体重1,000g未満)のお子さんに肝芽腫が発生しやすく(肝芽腫と低出生体重)、1980年代以降、肝芽腫の発生がわが国や欧米で増加している事実が知られています。図は肝芽腫のCT像を示します。

肝芽腫は腹部腫瘤、腹痛、発熱などで発症することが多く、食がすすまない、体重減少、貧血などの症状がみられることもあります。転移は肺に多く、その他、腹部のリンパ節、骨などにも転移します。 検査は超音波検査、CT、MRIなどのほか、骨シンチなどの検査を行いますが、血中のα-フェトプロテイン(AFP)がほぼ全例で高値を示すため、治療効果や再発の有無を知るための重要な腫瘍マーカーとして用いられます。治療は、外科的な切除が最も効果的な治療法ですが、腫瘍が大きい場合や、血管の近くにある場合などは化学療法を行ってから切除するのが一般的です。手術後にも腫瘍の進展度に応じた化学療法を併用します。化学療法にはシスプラチン(Cisplatin, CDDP)やTHP-アドリアマイシン(THP-adriamycin)などが用いられます。肺に転移があっても、化学療法と積極的な手術が行われます。わが国のグループ研究では、全体で66%の5年無病生存率が得られていますが、進行例では治療成績は40%台に止まっています。

肝細胞癌(成人型肝癌)

肝細胞癌(成人型肝癌)は肝芽腫の次に多く、こどもの悪性肝腫瘍の10-30%を占めます。男児に多く、好発年齢は5歳以上の学童期です。大人では肝硬変から肝細胞癌を発生することが多いのに対し、こどもでは肝硬変から発生する肝細胞癌の頻度は5-30%程度です。チロシン血症、胆道閉鎖症、新生児肝炎、α1-アンチトリプシン欠損症、長期間の中心静脈栄養に起因する肝硬変などの慢性的な病気から肝細胞癌が発生することも知られています。B型肝炎の感染が肝細胞癌の発生に重要な役割を演じている可能性も指摘されています。腹痛、腹部腫瘤などで発症し、発熱、体重減少、黄疸などを認めます。腫瘍破裂により出血性ショックに至ることもあります。 血中のα-フェトプロテイン(AFP)は50-80%の症例で高値を示します。進展し完全切除できないことが多く、抗がん剤の効果も限定的で、治療成績は肝芽腫に比べて不良です。図は、肝細胞癌のMRI像を示します。

血管腫

肝血管腫のうち、新生児期または乳児期(生後6カ月未満)にみられる血管腫は血管内皮腫とよばれます。腹部腫瘤や随伴する合併症により発見されます。腫瘍は一時期、増大しますが、生後6カ月以降は自然に小さくなること(退縮)が期待できます。腫瘍が大きくなると心不全になったり、血小板減少による出血傾向(カサバッハ-メリット症候群)、腫瘍破裂などの危険があります。治療は、腫瘍の大きさ、部位、症状などにより治療法を選択します。治療法にはステロイドやインターフェロンαの投与、肝動脈塞栓術(または結紮術)、放射線照射、肝切除などがあります。

間葉性過誤腫

乳幼児期に好発する肝の良性腫瘍です。図は、のう胞(液体を入れた袋)を多数みとめる肝間葉性過誤腫の超音波検査の像です。