肝芽腫と低出生体重

低出生体重

出生時の体重が2,500g未満のこどもを低出生体重児といいます。特に1,500g未満の場合を極低出生体重児、1,000g未満の場合を超低出生体重児といいます。一方、肝芽腫はこどもの肝臓に発生する小児がんの一つで、80%が3歳以下の乳幼児に発生します。低出生体重児に肝芽腫が発生しやすいという事実はわが国で発見されました。

肝芽腫

1997年、池田(現、獨協医科大学埼玉医療センター小児外科教授)は1990年以降、日本で低出生体重児に発生する肝芽腫が増加している事実を発見し報告しました。その後、わが国の検討で、(1)超低出生体重児では40倍、肝芽腫を発生しやすいこと、(2)低出生体重児の肝芽腫は進行例が多いこと、および(3)新生児期、乳児期の酸素投与と肝芽腫の発生に関連があることが明らかとなりました。低出生体重児に肝芽腫が発生しやすい理由としては、低出生体重児の未熟性と周産期の環境要因が関与している可能性が考えられています。肝芽腫と低出生体重の関係は、米国やドイツなど未熟児新生児医療の先進国に共通の現象であることが確認され、小児がんの教科書に記載されました。現在、多くの小児科、小児外科、小児がんの教科書に重要な事実として記載されています。図は、Pizzo & Poplack著「Pediatric Oncology、第4版」(2002年)です。

 

現時点では、残念ながら肝芽腫の発生を予防することはできません。出生体重1,500g未満のお子さん、特に出生体重1,000g未満のお子さんは、新生児科医による定期的な検診を受けることが重要です。