提唱している学説:肝臓の生体防御機構


肝臓に感染が起こると、肝臓在住マクロファージ(クッパー細胞)が、病原体を食べて処理するだけでなく、ケモカイン(いわば細胞のフェロモン)を産生して樹状細胞前駆体を骨髄から誘引し、選択的結合によって肝臓に集め、樹状細胞が病原体を捕捉する機会をつくる。そして、樹状細胞は、肝血管(類洞)から肝リンパへはいり、所属リンパ節に遊走した後、免疫応答を引き起こすことにより、病原体を排除することを私たちは発見した。これを私達は、「肝臓の新しい生体防御機構」という学説として提唱している (Int. Rev. Cytol. 197: 83-135, 2000., Gastroenterology 121: 1460-1472, 2001.)。

付録ムービー:樹状細胞の肝臓内のリアルタイムで動きが見られます。樹状細胞(白)をラットの血管内に注入し、共焦点レーザー生体顕微鏡で肝臓を生きたまま観察したもの。肝臓に流れてきた樹状細胞がクッパー細胞と接着し、血管内で動かなくなる様子と、クッパー細胞を除いた肝臓では樹状細胞は肝臓に集まらなくなる様子がわかります (Gastroenterology 121: 1460-1472, 2001)。

新しい学説1の図

図:門脈を介して腸管から病原体が侵入した場合の 肝臓における生体防御機構の模式図。赤い顆粒は病原体を示す (Int. Rev. Cytol. 197: 83-135, 2000.より改変)





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