練習問題（6）

■骨格筋関連の問題（１）＿頭・頚・胸・腹・背

A．次の基本事項を簡単に説明しなさい。

1. 骨格筋の特徴は？主に骨格筋組織からなり、随意運動が可能。一般に、異なる骨に付着し関節運動を行う。
2. 起始・停止とは？起始は筋頭の骨への付着部位（動きが小さい、支点）、停止は筋尾の骨への付着部位（動きが大きい、作用点）
3. 鼠径靭帯とは？external oblique の腱膜の下縁の肥厚部。体の前面で腹部と大腿部の境界をなす。　
4. 精巣挙筋とは？internal oblique の最下部の筋束が下行し、精索 spermatic cord を包み精巣 testis へ達する
5. 横隔膜とは？舌骨下筋に由来する骨格筋。胸腔と腹腔の境界をなすが、大動脈・大静脈・食道などによって貫かれている。最重要な呼吸筋。腹圧の調整も行う。頚神経叢の枝である横隔神経 phrenic nerve の支配を受ける。
6. 固有背筋とは？脊柱の後部にあって、肋骨角の内側に位置する。胸腰筋膜によって包まれ、軸骨格に起始・停止し、脊髄神経の後枝の支配を受ける深背筋群。腹筋とは拮抗的に働く。
7. 固有胸筋とは？主に肋間隙にあって胸郭の変形に関与し、肋間神経に支配される深胸筋群（肋間筋 intercostal muscles）。呼吸筋であり、上肢の運動とは無関係。
8. 肋間神経とは？胸神経前枝
9. 斜角筋隙とは？前斜角筋 scalenus anterior と中斜角筋 scalenus medius と第一肋骨によって囲まれた隙間、腕神経叢 brachial plexus と鎖骨下動脈 subclavian artery が通る

B．以下の体腔の壁（体壁）を構成する骨格と筋群について答えなさい。

1. 頭蓋腔：脳頭蓋、 （筋群なし）
2. 口腔：顔面頭蓋、 頬筋・舌骨上筋（顎舌骨筋）・口輪筋 orbicularis oris・口蓋筋・舌筋
3. 頚の体腔：頚椎 cervical vertebrae・舌骨 hyoid bone、 舌骨下筋・側頚筋・後頚筋
4. 胸腔：胸郭 thorax、 横隔膜 diaphragm・深胸筋
5. 腹腔：腰椎 lumbar vertebrae・大骨盤 greater pelvis、 横隔膜 diaphragm・腹筋・内寛骨筋(腸骨筋・大腰筋)
6. 骨盤腔：小骨盤 lesser pelvis、 会陰筋 perineal muscles・外寛骨筋（梨状筋・内閉鎖筋）
7. 脊柱管：脊柱 vertebral column、 固有背筋 muscles of back proper

C．頭蓋と脊柱の連結について、その連結に関与する筋を含めて答えなさい。

• 骨による連結：環椎後頭関節（環椎・後頭骨 occipital bone）、正中環軸関節・外側環軸関節（環椎・軸椎）
• 筋による連結：固有背筋 muscles of back proper（脊柱起立筋 erector spinae、後頭下筋）、椎前筋（頭長筋、前頭直筋）

D．日常行っている体の運動を分析して、その運動の解剖学における名称、関与する関節（構成する骨）・筋（支配神経）について考察しなさい。

• （咀嚼関連）
  • 1. 下顎をあげる（食物を噛む）
  • 下顎骨 mandibleの挙上、顎関節 temporomandibular joint（側頭骨 temporal bone・下顎骨 mandible）、咀嚼筋（＝側頭筋 temporalis・咬筋 masseter・内側翼突筋 medial pterygoid、下顎神経）
  • 2. 下顎をさげる（口をあける）
  • 下顎骨 mandibleの下制、顎関節 temporomandibular joint（側頭骨 temporal bone・下顎骨 mandible）、舌骨上筋（下顎神経・顔面神経・舌下神経）・舌骨下筋（頚神経前枝）
  • 3. 頬を歯に押しつける
  • 頬の緊張、（関節関与なし）、頬筋 buccinator （顔面神経）
  • 4. 食物が咽頭に行くのを一時とめる
  • 口峡の括約、（関節関与なし）、口蓋筋（迷走神経）、舌筋の舌根部（舌下神経）
  • 5. 口から食物がこぼれないようにする
  • 口裂の括約、（関節関与なし）、口輪筋 orbicularis oris（顔面神経）
• （呼吸関連）
  • 6. 息をすう
  • 胸郭 thoraxの挙上、肋椎関節（肋骨・胸椎）・胸肋関節（肋骨・胸骨）、横隔膜 diaphragm（横隔神経）・外肋間筋 external intercostal muscle（肋間神経）・斜角筋 scalenus（頚神経叢）
  • 7. 息をはく
  • 胸郭 thoraxの下制、肋椎関節（肋骨・胸椎）・胸肋関節（肋骨・胸骨）、腹筋（肋間神経、腰神経叢）・内肋間筋internal intercostal muscle（肋間神経）
• （首の運動）
  • 8. くびを後ろに曲げて空を見上げる
  • 頚 neckの後屈、椎間関節 zygapophysial [zygapophyseal] joint（頚椎 cervical vertebra、後頭骨 occipital bone）、固有背筋 muscles of back proper（＝後頭下筋・脊柱起立筋 erector spinae、頚神経後枝）
  • 9. くびを前に曲げて地面を見る
  • 頚 neckの前屈、椎間関節 zygapophysial [zygapophyseal] joint（頚椎 cervical vertebra、後頭骨 occipital bone）、椎前筋（＝頭長筋・頚長筋、頚神経神経叢）
  • 10. くびをまわして横を見る
  • 頚 neckの回旋、正中・外側環軸関節（環椎・軸椎）・椎間関節 zygapophysial [zygapophyseal] joint（下部頚椎）、胸鎖乳突筋 sternocleidomastoid（頚神経神経叢・副神経）
• （体幹の運動）
  • 11. 胴体を前におる
  • 体幹 trunkの前屈、椎間関節 zygapophysial [zygapophyseal] joint（主に腰椎 lumbar vertebra）、腹直筋 rectus abdominis（肋間神経＋腰神経叢の枝）
  • 12. 胴体を後ろに反らす
  • 体幹 trunkの後屈、椎間関節 zygapophysial [zygapophyseal] joint（主に腰椎 lumbar vertebra）、脊柱起立筋 erector spinae（脊髄神経後枝）
  • 13. 胴体を左右にまわす
  • 体幹 trunkの回旋、椎間関節 zygapophysial [zygapophyseal] joint（主に腰椎 lumbar vertebra）、側腹筋（肋間神経＋腰神経叢の枝）・横突棘筋（＝回旋筋・多裂筋、腰神経後枝）

E．以下で指定した関節について、可能な運動、関節を構成する骨、関与する主な筋、その支配神経について答えなさい。

1. 顎関節：
   • 下顎骨 mandible の挙上と移動（前後、左右）；側頭骨 temporal bone、下顎骨 mandible；側頭筋temporalis　と咬筋 masseter と翼突筋 pterygoid （外側と内側）；下顎神経
   • 下顎骨 mandible の下制；側頭骨 temporal bone、下顎骨 mandible；舌骨上筋群 suprahyoid muscles と舌骨下筋群 infrahyoid muscles；下顎神経or下歯槽神経or顎舌骨筋神経[⇒顎二腹筋前腹＋顎舌骨筋]・顔面神経[⇒顎二腹筋後腹＋茎突舌骨筋]・舌下神経[⇒オトガイ舌骨筋]、頚神経ワナ[⇒舌骨下筋群]
2. 頭関節：（＝環椎後頭関節＋正中・外側環軸関節）、頭 headの回旋と前屈・後屈と側屈；occipital bone、環椎 atlas、軸椎 axis；椎前筋と固有背筋 muscles of back proper （後頭下筋など）；頚神経の前枝と後枝
3. 肋椎関節：胸郭 thorax （肋骨 rib）の挙上と下制；肋骨 rib と胸椎 thoracic vertebra；internal/external intercostal muscles；肋間神経
4. 腰椎の椎間関節：体幹 trunkの回旋と前屈・後屈と側屈；lumbar vertebrae；腹筋と固有背筋 muscles of back proper （脊柱起立筋 erector spinaeなど）；脊髄神経の前枝（主に肋間神経と腰神経叢）と後枝

F．次に挙げる背の筋（または筋群）について、起始・停止・作用・支配神経について答えなさい。

1. 僧帽筋 trapezius
   • 起始： 後頭骨 occipital bone、頚椎 cervical vertebraと胸椎 thoracic vertebraの棘突起 spinous process
   • 停止： 肩甲骨 scapula（肩甲棘と肩峰）、鎖骨 clavicle
   • 支配神経： 副神経と頚神経叢
   • 作用： 上肢帯 shoulder girdleの各種の運動
2. 広背筋 latissimus dorsi
   • 起始： 胸椎 thoracic vertebra（第７以下）の棘突起 spinous process、胸腰筋膜、肋骨 rib、腸骨稜、肩甲骨 scapula
   • 停止： 上腕骨 humerus （小結節稜）
   • 支配神経： 腕神経叢の枝（胸背神経）
   • 作用： 上腕骨 humerus　の内転
3. 脊柱起立筋 erector spinae
   • 支配神経： 各筋とも脊髄神経後枝
   • 腸肋筋
     • 起始： 腸骨稜と下位の肋骨角
     • 停止： 上位の肋骨角
     最長筋
     • 起始： 仙骨後面、腸骨稜、腰椎棘突起、胸椎・頚椎の横突起
     • 停止： 腰椎副突起、肋骨角、胸椎・頚椎の横突起、乳様突起
     棘筋
     • 起始： 上位腰椎〜下位頚椎の棘突起
     • 停止： 上位胸椎〜上位頚椎の棘突起
4. 横突棘筋
   • 支配神経： 各筋とも脊髄神経後枝
   • 回旋筋
     • 起始： 横突起 transverse process
     • 停止： 直上または１個の椎骨 vertebra を隔てた棘突起 spinous process
     多裂筋
     • 起始： 横突起 transverse process
     • 停止： ２〜３個の椎骨 vertebra を隔てた棘突起 spinous process
     半棘筋
     • 起始： 横突起 transverse process
     • 停止： ４個以上の椎骨 vertebra を隔てた棘突起 spinous process