骨格系（総論）
　skeletal system

０．骨 bone： 主に骨組織からなる、体の支柱を構成する器官

　　　　　自然骨 natural bone
　　　　　晒骨 macerated bone
　　　　　脱灰骨 decalcified bone

１．階層

　　　　　全身骨格
　　　　　　　　骨格　skeleton
　　　　　　　　　　　骨 bone
　　　　　　　　　　　　　　骨単位 osteon = Haversian system
　　　　　　　　　　　　　　　　　ハバース管　Haversian canal (血管)
　　　　　　　　　　　　　　　　　ハバース層板 Haversian lamellae (骨層板 bone lamellae)
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　骨細胞 osteocyte　（← 骨芽細胞　osteoblast）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　細胞間質 intracellular substance 　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　骨基質 bone matrix
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　膠原線維 collagen fiber

２．骨の形態による分類（標）

• 長骨 long bone ： 四肢骨（大腿骨・上腕骨）
• 短骨 short bone ： 手根骨・足根骨
• 扁平骨 flat bone ： 脳頭蓋（頭頂骨・前頭骨）、寛骨（腸骨）
• 不規則形骨 irregular bone ： 椎骨・下顎骨
• 含気骨 pneumatic bone ： 篩骨・上顎骨・側頭骨

３．長骨の基本形態（図）

• 髄腔 medullary cavity： 管状、骨髄
• 骨幹 diaphysis ： 中央部
• 骨端 epiphysis ：両端（関節部）
• 骨幹端 metaphysis ：骨端軟骨、骨端線epiphysial line（骨化後）

４．骨の基本構造

• 骨質 （骨組織）
  • 緻密質compact bone ：表層部、骨幹、（鼻腔壁）
    　　(骨)皮質 cortical bone：骨端の表面
  • 海綿質 spongy bone ：内部、骨端、板間層（頭蓋冠）
• 軟骨質 （軟骨組織、硝子軟骨）
  • 関節軟骨 ariticular cartilage
  • 骨端軟骨 epiphysial cartilage：長軸（長さ）方向の成長、骨端線
• 骨髄 bone marrow （細網組織）
  • 赤色骨髄 ：造血
  • 黄色骨髄 ：脂肪化（成人の体肢）
• 骨膜 periosteum （線維性結合組織）
  • 骨表面に密着
    • 骨内膜 endosteum
    • 関節面に骨膜はない（関節包へ移行）
  • 栄養、痛み
  • 太さの成長、再生

５．骨組織

• 叢状骨 woven bone
  　　　網状線維性骨（骨化した結合組織）
  　　　発生途中のみ（成人では、頭蓋の縫合や骨迷路のみ、骨折時の仮骨形成）
  　　
• 層板骨 lamellar bone　（図）
  • オステオン osteon（骨単位、円柱、年輪状に）
    　　ﾊﾊﾞｰｽ管（中心管）・ﾌｫﾙｸﾏﾝ管（貫通管）：血管、神経
    　　骨層板 bone lamellae、（介在層板）
    　　骨細胞 osteocyte（骨小腔、骨小管）
    　　ｵｽﾃｵﾝの方向と外力方向が一致するという説
    

６．骨基質の組成

• 成分
  • 水分20-25%
  • 水分以外の１／３は有機物：膠原線維
  • 水分以外の２／３は無機質：リン酸Ca(85%)、炭酸Ca(10%)
• 生成
  • 骨芽細胞
    • 膠原線維とCa塩分泌を止めると骨細胞へ
• 複合材料　(collagen ＋ hydroxy‐apatite Ca₁₀(PO₄)₆(OH)₂ )
  • 酸：脱灰、 →軟化　[ｺﾗｹﾞﾝのみ]
  • 晒：軟組織の除去(腐敗)、融解(ｱﾙｶﾘ) →脆弱化　[Ca塩のみ]

７．発生と成長

• 膜性骨化　membranous ossification　（付加骨、膜性骨、[古い！、外骨格、鱗など]）
  　　＝膜内骨化 intramembranous
  　　間葉　→　骨 （頭蓋冠・顔面骨・鎖骨）
  　　　　▼間葉：胎生期の幼若結合組織（未分化）
• 軟骨性骨化 chondral ossification （軟骨性骨、置換骨）
  　　＝軟骨内骨化 endochondral
  　　間葉　→　軟骨　→　骨 （頭蓋底部・脊柱・胸郭・体肢の骨）
  　　一次・二次骨化中心
• 長骨の成長
  　　　　太さ（肥厚）：骨膜（付加成長）
  　　　　長さ（伸張）：骨端軟骨、骨端線（成長終了、軟骨の骨化）（置換成長）
• 骨質のリモデリング（改築）remodeling
  　　　　成熟骨の骨質の吸収と再生（乳幼児50%/年、成人5%/年）
  　　　　吸収：破骨細胞 osteoclast
  　　　　再生：骨芽細胞 osteoblast、オステオンの生成
  　　　　骨粗鬆症 osteoporosis

８．骨の連結（広義の関節　joint/junction/arthrosis）[ｲﾗｽﾄ準備予定]

• 不動性連結 synarthrosis (immovable joint)
  • 線維性連結 fibrous joint
    • 靱帯結合 syndesmosis：骨間膜（前腕、下腿）、頭蓋、脊柱
    • 縫合 suture：頭蓋
    • 釘植 gomphosis：歯根〜歯槽
  • 軟骨性連結 cartilaginous joint
    • 軟骨結合 synchodrosis（硝子軟骨） ：　蝶後頭軟骨結合(骨化) spheno-occipital synchondrosis
    • 線維性軟骨結合 symphysis（線維軟骨）：　恥骨結合 pubic symphysis、椎間結合 intervertebral symphysis
  • 骨性連結 bony union
    • 骨結合 synostosis ：寛骨・仙骨・尾骨

• 可動性連結 diarthrosis (articulation/movable joint)
  • 滑膜性連結 synovial joint ＝（狭義の）関節
    • 基本構造
      1. 骨端 ：関節頭 articular head ＋関節窩 articular fossa
      2. 関節面 ：関節軟骨 articular cartilage
      3. 連結部 ：関節包 articular capsule （滑膜 synovial membrane）、関節腔 articular cavity （滑液 synovial fluid）
    • 特殊構造
      1. 靱帯 ligament
         • 関節内靱帯（大腿骨頭靱帯、十字靱帯 cruciate ligament）
         • 関節外靱帯（蝶番関節の側副靱帯collateral ligament）
      2. 関節半月 articular meniscus　（膝関節）
      3. 関節円板 articular disc　（顎関節、胸鎖関節、手関節）
      4. 関節唇 articular labrum　（肩関節、股関節）
      5. 種子骨 sesamoid bone　（膝関節、中足趾節関節[母趾]）
      6. 関節筋（肘関節筋、膝関節筋）
      7. 滑液包 bursa
      8. 腱 tendon（上腕二頭筋長頭の起始腱、膝窩筋の起始腱）
         
• 関節の形態と運動機能による分類
  
  

  形態		機能	関節名
  球関節	spheroidal joint ball-and-socket joint	多軸	肩、股、中手指節、中足趾節
  楕円関節	ellipsoid joint	二軸	環椎後頭、橈骨手根（＝手）
  鞍関節	saddle joint	二軸	手根中手（母指球）、足根中足（母趾球）
  蝶番関節	hinge joint	一軸	膝、肘関節（腕尺）、指節間　（PIP, DIP）
  車軸関節	pivot joint	一軸	（上・下）橈尺、正中環軸
  平面関節	plane joint	（滑り運動）	椎間
  半関節*	amphiarthrosis	（可動性小）	仙腸、手根間
  その他	-	（回転と滑り）	顎（平面+蝶番）

  　* 半関節は可動性の小さい平面関節
  　
• 構成する骨数
  　　単関節 ：２骨
  　　複(合)関節 ：肘、橈骨手根

９．骨格 skeleton ：骨 boneの集合（骨組み）

全身骨格(n=200+α; 成人の全身骨格は200個の骨から構成される)

　軸骨格 axial skeleton (23+26+25 = 74)

• 頭蓋 cranium （頭） ：=23　（頭蓋は23個の頭蓋骨 cranial bones, bones of cranium から構成される*）
• 脊柱 vertebral column （背） ：26 (= 7+12+5+1+1)　（脊柱は26個の椎骨 vertebrae から構成される**）
• 胸郭 thorax, thoracic skeleton（胸） ：25 (= 1+12x2、胸椎は脊柱で重複するので除く)
  • 　
  • * postcranial bones [和名ナシ；直訳すれば後頭蓋骨]は、全身の骨(200)から頭蓋骨(23)を除いた177個の骨の総称。
  • ** 仙骨と尾骨が骨結合する前では、33個（32〜34）からなる。

　付属肢骨格　appendicular skeleton (32x2+31x2 = 126; 四肢骨 limb bones)

• 上肢骨格 skeleton of upper limb ：64 = 32x2 -- 64個の上肢骨 bones of upper limb　から構成される
  • 上肢帯(2) pectoral (shoulder) girdle （胸〜上腕、≒肩）
  • 自由上肢骨格 （上肢） free part of upper limb skeleton
    • 上腕の骨(1) （上腕）
    • 前腕の骨(2) （前腕）
    • 手の骨(27) （手）
      • 手根骨(8)・中手骨(5)・指骨(14)
• 下肢骨格 skeleton of lower limb ：62 = 31x2 -- 62個の下肢骨 bones of lower limb　から構成される
  • 下肢帯(1) pelvic girdle （骨盤*〜大腿、≒股） - 骨盤には左右の下肢帯と脊柱の下端（仙骨＋尾骨）が含まれる
  • 自由下肢骨格 （下肢） free part of lower limb skeleton
    • 大腿の骨(2) （大腿）
    • 下腿の骨(2) （下腿）
    • 足の骨(26) （足）
      • 足根骨(7)・中足骨(5)・趾骨(14)

　その他 （耳小骨、種子骨）

１０．骨格と体腔の関係

* 鼻腔・口腔は気道や消化管であって体腔とは言えない。