樹状細胞 - 1:樹状細胞とは



樹状細胞 (dendritic cell) は、1973 年にロックフェラー大学のスタインマン博士らによって発見された、歴史の新しい細胞である。名が示すとおりの突起を四方八方に突き出すこの細胞は、抗原提示の専門家で、自分が取り込んだ抗原を「こんな物質があるよ」と免疫系の細胞に教える、生体防御にとってきわめて重要な細胞である。

Dendritic cell

図:ラットリンパ節の組織切片の免疫染色。樹状細胞(青)が増殖するTリンパ球と細胞集塊を作っていることがわかる。この中で、抗原提示がおこる (J. Leukoc. Biol. 69: 705-712, 2001.)





樹状細胞 - 2:樹状細胞と私


樹状細胞と私のつきあいは20年余りになる。私たちは肝臓に感染が起こると、樹状細胞(前駆体)が血流に乗って肝臓に駆けつけ、クッパー細胞(マクロファージ)に接着して、抗原を取り込むと、こんどはリンパ管を流れてリンパ節に行き、免疫応答を起こすという忍者さながらのはたらきをすることを明らかにした。この発見は、試験管の中での実験では無く、生体内での観察によるもので、私たちの in vivo 免疫学(個体レベルでの免疫学)のひとつの勝利だった。


Steinman, Inaba, and Matsuno

写真:来日されたスタインマン教授(右より2番目)と、一番弟子で日本の樹状細胞研究の第一人者の稲葉カヨ京大教授(前列)。 左端が松野。


Steinman, Inaba, and Matsuno

写真:本学を訪問されたスタインマン教授(2009年5月、右から3番目、この2年半後にノーベル医学生物学賞を受賞するがその数日前に膵臓ガンで逝去)


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