発生・分類
肺芽腫は未熟な胎児肺様の組織からなる肺の腫瘍です。肺芽腫には、成人型の肺芽腫と小児にみられる肺芽腫があり、成人型は1)高分化胎児型肺腺癌(well-differentiated fetal adenocarcinoma, WDHA)と、2)二相性肺芽腫(biphasic pulmonary blastoma)に分類されます。小児みられる肺芽腫は胸膜肺芽腫(pleuropulmonary blastoma)とよばれ、成人型の肺芽腫とは発生部位や組織像に相違があり、起源も異なる別個の腫瘍と考えられています。小児の肺芽腫とは胸膜肺芽腫をさします。
特徴
胸膜肺芽腫には、1)肺、胸膜、縦隔などに発生する悪性腫瘍であり、2)5歳以下、特に3歳以下の乳幼児に発生する、3)のう胞性肺疾患が30-40%の頻度で合併する、4)家族に先天的な臓器の形成異常や腫瘍の発生をみることがある、5)せき(咳嗽)、胸痛、呼吸困難、発熱などを症状とする、6)脳、脊髄、骨などへ転移する 、などの特徴があります。
診断
血液検査では、炎症反応(CRP、白血球数、血沈)、α-フェトプロテイン(AFP)、LDH などが高値を示します。胸部X線写真の他、CT、MRIなどの検査を行います。切除標本の病理診断では、のう胞性(Type I)、のう胞+充実性(Type II)。充実性(Type III)に分類されます。
治療・治療成績
手術では、一期的摘除または化学療法後の二期的摘除が行われます。化学療法では、多剤併用療法または造血幹細胞移植を併用した超大量化学療法が施行されます。治療成績は、全体の5年生存率が45%、type I、II+IIIではそれぞれ83%、42%と報告されています。局所再発はtype Iで14%、type II+IIIで46%にみられ、遠隔転移はtype II+IIIで30%にみられると報告されています。胸膜や縦隔に進展した例では予後が不良です。