肛門周囲膿瘍・乳児痔瘻、痔裂

肛門周囲膿瘍・乳児痔瘻

生後1カ月をすぎたあたりから1歳前の乳児の肛門の回りに膿(うみ)がたまることがあります。これを肛門周囲膿瘍といいます。 多くは男児にみられ、しばしば下痢をともないます。図は直腸と肛門の断面を示します。直腸と肛門の堺の肛門窩から肛門腺に侵入した細菌が感染をおこし、肛門の回りの皮下に膿のたまり(膿瘍)をつくります(図の赤部分)。

肛門周囲膿瘍は3時と9時の方向にできることが多く、さらに皮膚から膿が出てくるようになると痔瘻(乳児痔瘻)といいます。原因は乳児期の不完全な免疫力が関係していると言われています。

肛門周囲膿瘍(乳児痔瘻)は1歳までは再発を繰り返すことが多く、根気よく治療を続けることが大事です。膿がたまれば切開をして膿を出してあげます。さらに排便後のおしりの洗浄、消毒、抗生物質入り軟膏の塗布などで対処します。多くの場合、1歳をすぎると自然に治り再発しなくなります。1歳をすぎても再発を繰り返し痔瘻が残る場合や、女児で膣前庭部や陰唇に瘻孔をつくった場合には瘻孔切除などの手術が必要になります。

痔裂

痔裂は肛門粘膜が裂けて出血や排便時の肛門痛の原因となるもので、肛門の6時、または12時方向に好発します。多くの場合、硬い便が原因です。1歳から3歳ぐらいの乳児に多く、排便時の痛みから排便を我慢するため、さらに便がたまり硬い便をつくる結果となり、悪循環となります。

治療は痔疾患に用いる軟膏や座薬で肛門の炎症や痛みをとることから始めますが、硬便をつくらないように毎日の排便習慣をつけることが特に重要です。充分な水分を摂取し、必要なら緩下剤で排便をしやすくします。