気胸

分類

気胸は肺の外側の胸膜腔に気体が貯留した状態で、原因により特発性続発性外傷性医原性の気胸などに分類されます。呼吸障害や胸痛などの原因となり、胸のX線検査で診断されます。図は、正常の胸部X線写真(図上)と気胸のX線写真(図下)を示します。正常では両側の肺(青)が膨らんでいますが、気胸では胸膜腔(グレー)に空気が入り、肺がしぼんでしまいます。

新生児期の気胸:空気漏出症候群

新生児では肺がかたく、肺を膨らませるのに高い圧が必要です。約1%の頻度で自然に気胸が発生し、不穏状態、多呼吸、チアノーゼなどの症状を呈することがあります。胎便吸引症候群、呼吸窮迫症候群、新生児一過性多呼吸などの呼吸器疾患を有する児ではより高率に気胸を合併することがあります。人工呼吸管理や蘇生操作も気胸の原因となります。肺胞から漏れた空気は肺実質内に貯留し間質性肺気腫の原因となり、また気胸、気縦隔、心膜気腫、皮下気腫、気腹などの原因ともなります(空気漏出症候群)。

続発性気胸

気管支喘息や肺感染症(ブドウ球菌性肺炎、肺結核、百日咳など)、気道異物などを原因とし気胸が発生することがあります。特に、乳幼児期のブドウ球菌性肺炎は重症になりやすく、気胸や膿胸を合併しやすいことが知られています。

特発性気胸

思春期以降の長身、痩せ型の男子に多く、肺内のブラや胸膜直下のブレブの破裂が原因で自然に気胸が発生します。突然の胸痛や咳嗽発作が症状で、呼吸困難になることもあります。X線検査やCTでブラやブレブの存在が診断されれば、手術の対象となります。

医原性気胸

中心静脈カテーテルの挿入など医療行為にともなって発生する気胸です。人工呼吸管理中の高気道圧を原因とする気胸も医原性気胸に含まれます。

外傷性気胸

交通事故など外傷により発生する気胸です。

緊張性気胸

緊張性気胸では肺がしぼみ、縦隔が反対側へおされ、反対の正常の肺も圧迫されます。呼吸障害、循環障害によりチアノーゼ、頻脈、血圧低下などの症状を呈し、放置すれば生命の危険な状態となります。いずれの原因の気胸も緊張性気胸へ移行する可能性があります。図は、緊張性気胸で左の胸膜腔に空気がたまり(グレー)、左の肺(青)が極端にしぼみ、縦隔と心臓が右側へ押され、右肺も圧迫されている様子を示します。

診断

胸部のX線検査により気胸の存在と程度を診断します。肺のつぶれが軽微である場合は軽度、肺が2/3以下につぶれている場合を中等度、肺が完全につぶれている、または緊張性気胸になっている場合を重度と診断します。

治療

軽度であれば安静と酸素吸入などで治癒します。中等度の場合には、トロッカーカテーテルの挿入と持続吸引による胸腔ドレナージを行います。重度では胸腔穿刺による脱気後、持続吸引による胸腔ドレナージが必要です。特発性気胸で再発を繰り返す場合や、ブラやブレブの存在が診断された場合には外科的治療の対象となります。胸腔鏡で肺の観察を行い、ブラやブレブに対しては胸腔鏡下肺部分切除術を行ないます。