発生
神経芽腫は副腎や交感神経節に発生する腫瘍です。多くは5歳以下のこどもに発生しますが、稀に5歳をすぎて発症したり、また生まれたばかりの新生児に発見されることもあります。副腎と交感神経節は胎児期の神経堤(しんけいてい)と呼ばれる共通の組織から発生するので、神経堤由来の細胞が神経芽腫の発生母地と考えられています。 神経芽腫は発症した年齢により症状や悪性度、治療に対する反応などが異なります。神経芽腫の治療には専門的な知識と経験や技術が必要です。
乳児の神経芽腫
一般に乳児(1歳未満)の神経芽腫、特に病期(ステージ)4Sに分類される神経芽腫は自然に消失(自然退縮)する傾向があります。本来、人の発生段階では一時的に数多くの神経細胞がつくられ、この中から複数の神経細胞がぬけ落ちて最終的な神経系のネットワークが形成されます。自然退縮する神経芽腫ではこのような神経系の発生と同様の機序で腫瘍細胞が消えて腫瘍が消失するとも考えられます。いずれにしても乳児の神経芽腫は、腫瘍の増大、圧迫による呼吸障害や腎障害などをおこしやすい時期をのりきると治癒させることが可能です。このため腫瘍の大きな時期をのりきるための必要最小限の治療(手術、化学療法、放射線療法など)が行われます。 図は、肝転移をともなう病期4Sの神経芽腫で、手術、化学療法、放射線療法を組み合わせた治療により治癒しました。
進行神経芽腫
1歳以降に発症する神経芽腫は進行していることが多く、手術や化学療法、放射線療法を組み合わせた強力な治療が必要となります。特に病期4の場合や腫瘍のがん遺伝子N-myc(エヌミック)が増えている場合には、造血幹細胞移植(末梢血幹細胞移植)を用いた積極的な治療が行われます。1歳以降に発症した病期4の神経芽腫の場合、5年後の生存率は30~40%程度であり、新たな有効な治療法の開発が望まれています。図は、腹部の血管を巻き込んだ 右副腎原発の神経芽腫のCT像です。