下血

原因

肛門から血液または血液を混じた便を排泄することを下血といい、様々な腸の病気の症状として現れます。一般に胃や十二指腸からの出血は黒色タール便、小腸からの出血はアズキ色の便、大腸から肛門までの出血はイチゴジャム様の便または鮮血便というように、血便の色や性状から出血の部位や原因を推定することができます。下血の原因は年齢によっても異なり、新生児期には新生児メレナ、新生児仮性メレナ、胃・十二指腸潰瘍、壊死性腸炎、腸回転異常症(中腸軸捻転)などが下血の原因となります。 乳幼児期以降では、胃・十二指腸潰瘍、腸重積症、メッケル憩室、消化管重複症、アレルギー性紫斑病(アナフィラクトイド紫斑病)、細菌性腸炎、潰瘍性大腸炎、若年性ポリープ、痔裂などの様々な原因があります。

新生児期の下血

新生児の下血は新生児メレナとよばれます。生後2-4日頃に吐血とタール便を認めることがあり、大部分は新生児期のビタミンK欠乏を原因とします。ビタミンKは胎盤を通りにくく、新生児早期には腸内細菌からのビタミンKの補給が少ないなどの理由により、新生児ではビタミンKが欠乏状態にあります。ビタミンK欠乏状態では凝固因子が減少して出血しやすい状態になります。したがってビタミンKの投与が新生児メレナの予防および治療に有効です。重症例では輸血を必要とすることもあります。一方、生まれたばかりの赤ちゃんが分娩の際に飲み込んだ母体の血液を便中に排泄することがあります。これは新生児仮性メレナといい、特に治療の必要がない状態です。

乳幼児期以降の下血

アレルギー性紫斑病(アナフィラクトイド紫斑病)は腹痛、嘔吐、血便(タール便)などの腹部症状、下腿、大腿、臀部などにみられる蕁麻疹様小丘疹、点状出血班、および顔面、手足の浮腫などの皮膚症状、膝や足関節の腫脹、関節痛などの関節症状、血尿、蛋白尿などの腎症状を特徴とし、幼児期から学童期に好発します。細菌感染、ウィルス感染、アレルギー、薬物などが原因とする説がありますが、真の原因は不明です。輸液、抗生剤、ステロイドなどによる内科的治療を行ない、腸重積症、腸穿孔などの合併症を起こした場合には手術の対象になります。