肥厚性幽門狭窄症

症状・原因

肥厚性幽門狭窄症は生後3週から3カ月前後の乳児にみられ、飲んだ母乳やミルクを吐く(吐乳)ことから症状が始まります。男児に多く、300人から900人の赤ちゃんに1人の割合で発症すると言われています。胃の出口の筋肉(幽門筋)が厚くなり胃の内容が十二指腸へ流れなくなります。

肥厚性幽門狭窄症の成因に関しては古くから様々な仮説があります。最近では一酸化窒素(NO)合成酵素の欠損が関与するとの説が出されたり、消化管ホルモン“モチリン”と同様の作用を有する抗生物質エリスロマイシンを乳児に投与したら肥厚性幽門狭窄症が多発したとの報告もあります。また、家族内に発生することも3%‐18%の頻度でみられ、遺伝的素因が本症の発生に関与することも事実です。

診断

進行すると母乳やミルクを勢いよく吐くようになり(噴水状嘔吐)、あかちゃんの体重が減ったり、コーヒーかすを含んだような嘔吐(コーヒー残渣様嘔吐)や黄疸などが見られます。 赤ちゃんを仰向けに寝かせて腹部を観察すると、膨らんだ胃の動き(蠕動)で腹壁が波打つ様子を観察できることがあります。またおなかを触診すると肥厚した幽門筋(オリーブ)を確認することができます。

検査

確定診断には腹部の超音波検査または胃の造影検査が必要です。 超音波検査(図上)で幽門筋の肥厚(3mm以上)が確認できれば胃の造影検査は不要です。超音波検査では幽門管の延長(17mm以上)も確認できます。 胃の造影検査では、胃の出口が細くなっているようすが描出されます(図下、矢印)。

治療

入院後、点滴(輸液)治療を開始します。脱水が改善されたら厚くなった幽門筋を切開し胃内容の通りみちを広げる幽門筋切開術を行なうのが一般的です。通常、手術の翌日から哺乳を開始し1週間以内に退院することが可能です。昔は、幽門筋切開術を行なうために右上腹部の肋骨下に4cm程度の横切開(図左)をおきましたが、現在では整容的(美容的)観点から臍部弧状切開法(おへそに沿った切開、図右)が用いられるようになり手術後の傷あとはほとんど目立ちません。同じ理由から、腹腔鏡を用いた幽門筋切開術を行なう施設もあります。当施設では、臍部弧状切開法を用いて幽門筋切開術を行なっています。

内科的治療法について

手術を行なわずに硫酸アトロピンの内服や注射で肥厚性幽門狭窄症を治療する施設があります。しかし、硫酸アトロピンを用いた治療法は長期間を要し、また効果が不確実であることから、一般には外科的治療が選択されます。