胚細胞腫瘍

発生

胎児の原始生殖細胞(原始胚細胞)とよばれる細胞から卵巣や精巣が作られ、卵子や精子などの胚細胞がつくられます。卵子や精子になる細胞から発生した腫瘍は胚細胞腫瘍とよばれ、良性の奇形腫や悪性の腫瘍があります。胚細胞腫瘍は卵巣や精巣から発生しますが、頭(頭蓋内の松果体付近)、胸(縦隔)、おなか (後腹膜や胃)、おしり(仙尾部)などの性腺以外の部位からも発生します。性腺以外の部位から発生する腫瘍は、胎児期に原始生殖細胞が迷い込んだ結果と考えられています。図は、卵子や精子になる細胞から胚細胞腫瘍が発生することを示します。

分類・診断

良性の胚細胞腫瘍には奇形腫(きけいしゅ)、悪性の胚細胞腫瘍には未分化胚細胞腫(みぶんかはいさいぼうしゅ)(胚細胞腫)、卵黄のう腫瘍(らんおうのうしゅよう)、絨毛癌(じゅうもうがん)、胎児性癌(たいじせいがん) などがあります。精巣には、奇形腫、卵黄のう腫瘍が発生します。好発年齢は乳児期から5歳頃までです。図は、精巣に発生した卵黄のう腫瘍を示します。

卵巣に腫瘍が発生した場合には、下腹部のしこり(腫瘤)や腹部の膨隆に気付かれます。卵巣茎捻転による急激な腹痛で発症することもあります。多くは、学童期以降に発症します。卵巣には、良性奇形腫の他、卵黄のう腫瘍、未分化胚細胞腫などが発生します。良性の奇形腫では正常な卵巣組織をなるべく残すように手術を行いますが、茎捻転を起こしている場合には卵管卵巣を切除しなくてはならないこともあります。図は、卵巣の奇形腫(図上)と巨大な未分化胚細胞腫のCT像(図下)を示します。

胸部縦隔では、前縦隔の胸腺に奇形腫が好発します。悪性の腫瘍は稀です。腹部の後腹膜にも奇形腫が好発します。後腹膜では、腫瘍が大きく、血管を巻き込むため、摘出の困難なことがあります。仙尾部(仙骨の前から尾骨の周囲)に発生する胚細胞腫瘍の多くは奇形腫です。仙尾部奇形腫は女児に多く、胎児超音波検査で見つかることもあります。出生前に大きな腫瘍が発見された場合には腫瘍破裂、出血などを避けるため、帝王切開で分娩するのが一般的です。一方、乳幼児期に発見された場合には、悪性の可能性が高くなります。切除したときは良性でも、後に悪性の腫瘍として再発することがあるので注意が必要です。図は、右肺に発生した絨毛癌 (図上)と、臀部に発生した仙尾部奇形腫(図下)を示します。

診断

X線検査、超音波検査、CT、MRIなどの他、血液中の腫瘍マーカーを測定します。奇形腫ではX線検査により石灰化が見られるのが特徴です。 腫瘍マーカーとしては、卵黄のう腫瘍では血中のα-フェトプロテイン(AFP)、絨毛癌では血中のβ-HCG、卵巣腫瘍で血中のCA125などが診断や治療効果の判定、再発のモニターなどに有用です。

治療・治療成績

良性の奇形腫に対しては外科的切除を行います。悪性の場合には手術と抗がん剤(シスプラチンなど)を組み合わせた治療が行われます。頭蓋内の胚細胞腫瘍に対しては放射線照射が用いられます。 治療成績は、良性の奇形腫では97%の5年生存率が得られていますが、3%に再発がみられ、その一部は悪性として再発します。一方、悪性の胚細胞腫瘍では85%の5年生存率が得られていますが、転移を有する場合の5年生存率は60%です。