先天性胆道拡張症、膵胆管合流異常

病態・原因

先天性胆道拡張症は胆汁のとおり道(胆道)である胆管が先天的にのう胞状または紡錘状に拡張し、腹痛、黄疸、腹部腫瘤などの原因になる疾患です。幼児期から学童期にかけて診断されることが多い疾患ですが、胎児超音波検査により出生前に診断されることもあります。女児に多い、欧米よりアジアに多い(特に日本人に多い)などの特徴があります。先天性胆道拡張症には胆管と膵管の合流形態の異常(膵・胆管合流異常)をともなうことが多いため、先天的な膵・胆管合流異常に原因する膵液の胆管内への逆流が胆道拡張の原因に関連があると考えられています。図は、正常な肝臓と胆管の関係(図上)、のう胞状拡張の先天性胆道拡張症(図中)、紡錘状拡張の先天性胆道拡張症(図下)を示します。

 

膵・胆管合流異常

正常な胆管と膵管の合流は十二指腸乳頭部の近くにあります(図上)。胆管(黄)と膵管(青)の合流部には括約筋が作用して胆汁も膵液も逆流しない構造になっています。一方、膵・胆管合流異常には、十二指腸乳頭部の括約筋の上流で胆管に膵管が合流するタイプ(図中)、膵管に胆管が合流するタイプ(図下)、合流部(共通管)が長いタイプなどがあり、胆汁、膵液の相互逆流が生じ、先天性胆道拡張症の他、胆管炎、膵炎、胆道癌などの原因になると考えられています。

症状・診断

先天性胆道拡張症では、 膵液の胆管内への逆流、胆汁の膵管内への逆流にともない、胆管炎や膵炎をおこし、腹痛、発熱、黄疸、嘔吐などの症状を呈します。血液検査では肝機能異常や高アミラーゼ血症がみられます。腹部超音波検査やCT検査により診断は比較的容易です。膵・胆管合流異常の詳細を知るためには術中胆道造影や内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)が行われます。図は、術中胆道造影の像です。胆管の紡錘状拡張と合流部(共通管)が長いタイプの膵・胆管合流異常が認められます。

治療

先天性胆道拡張症は肝硬変や慢性膵炎、胆管癌、胆のう癌などの原因となるため手術による治療が必要です。拡張した胆道を切除し胆汁と膵液の逆流を防ぐ手術を行います。これを胆外胆道切除+肝管腸吻合術といいます。