胆道閉鎖症

発生

胆道閉鎖症は肝臓から十二指腸へ胆汁を送る胆管が閉鎖し、胆汁が出なくなる病気です。妊娠後期から分娩前後(周産期)にかけての炎症により胆管が障害されると考えられていますが、その原因についてはウィルス説や胆管形成障害説などがあり、不明です。出生10,000人に1人の割合で発生し、女児に多い傾向があります。また、10%に脾や大血管の異常をともなうことがあります。図は、正常な肝臓、胆のう、胆管の関係(図上)と、胆道閉鎖症の胆管と胆のうの様子(図下)を示します。胆道閉鎖症では、胆管が閉鎖し、胆のうは萎縮し、小さくなっていることがほとんどです。また、胆汁が出ないため、胆汁のうっ滞した肝臓は腫れて腫大します。

症状

黄疸と灰白色便、肝腫大が主な症状です。新生児の黄疸は通常、生後4-5日がピークで、生後1週をすぎると徐々に消失します。生後2週をすぎても黄疸が持続する場合には医師に相談してください。灰白色便とは灰色または白色の便ですが、クリーム色の便も注意が必要です。母子手帳に便色の比色表がありますので参考にしてください。胆道閉鎖症では生まれたばかりは黄色の便でも、その後にうすい黄色やクリーム色の便になることがあります。 胆道閉鎖症が疑われる場合には血液検査、尿検査のほかに腹部超音波検査や胆道シンチグラム、十二指腸液検査などが行われます。図は、胆道閉鎖症の胆道シンチグラムで、肝臓から胆汁が出ていない状態を示しています。

治療

できるだけ早期に手術を行います。手術は肝門部腸吻合術を行います。手術後に良好な胆汁の流出が得られると便色は黄色になり、血中のビリルビン値が下がります(正常値、<1mg/dl)。黄疸も消失します。ただし、手術後に胆汁が出ても、胆管炎をおこしたり、栄養障害や門脈圧亢進症、脾腫、食道静脈瘤の出血、肝内のう胞の形成、肝肺症候群などの続発症をきたすことがあります。したがって手術後も長期にわたって慎重な経過観察が必要です。手術後も黄疸が改善しなかったり、肝硬変から肝不全に進行するような場合には肝移植が行われます。図は、手術後の胆道シンチグラムで肝臓からの胆汁が出ている様子(図上)と、手術後に血中ビリルビン値が下がる様子(図下)を示しています。