鎖肛(直腸肛門奇形)

発生・分類

鎖肛は生まれつきの直腸や肛門の形成異常(直腸肛門奇形)で、出生5,000人に1人の頻度でみられます。鎖肛にはいろいろな病型(タイプ)があるため正確な病型診断をすることが重要で、治療後に排便・排尿の障害や性器機能の障害を残さないように慎重な治療(手術)が行なわれます。図は、正常な男児の膀胱・尿道(黄)と直腸・肛門(オレンジ)の関係 (図上)、および女児の膀胱・尿道(黄)、子宮・膣(ピンク)、直腸・肛門(オレンジ)の関係(図下)を示します。

鎖肛の病型分類:ウィングスプレッド(Wingspread)分類(1984):鎖肛は直腸を取り巻く筋肉群(恥骨直腸筋など)との関係から高位中間位低位の3型に分類されます。倒立X線撮影、尿道造影検査、瘻孔造影検査、超音波検査などにより病型診断を行ないます。正しい病型診断がその後の治療に大変、重要です。

  男児
高位 肛門直腸無発生
 a) 直腸前立腺部尿道瘻
 b) 無瘻孔
直腸閉鎖 
中間位 直腸球部尿道瘻
肛門無発生
低位 肛門会陰部皮膚瘻
肛門狭窄
  女児
高位 肛門直腸無発生
 a) 直腸膣瘻
 b) 無瘻孔
直腸閉鎖
中間位 直腸前庭瘻
直腸膣瘻
肛門無発生
低位 肛門前庭瘻
肛門会陰部皮膚瘻
肛門狭窄
特殊型 直腸総排泄腔瘻

例1)直腸前立腺部尿道瘻(男児、高位型):直腸(オレンジ)の下端は筋肉(茶)の上縁にわずかに達しているのみで、直腸は前立腺部尿道(黄)と瘻孔(トンネル)でつながっている。

例2)直腸球部尿道瘻(男児、中間位型):直腸の下端は筋肉内に入っているが完全には通過していないで、直腸は球部尿道と瘻孔でつながっている。

例3)肛門会陰部皮膚瘻(男児、低位型):直腸の下端は筋肉を完全に通過しているが肛門には達していないで、直腸は会陰部の皮膚と瘻孔でつながっている。

例4)直腸膣瘻(女児、中間位型):直腸の下端は筋肉内で、膣と瘻孔でつながっている。

治療

低位型では新生児期に肛門形成術を行ないます。女児の膣前庭瘻では一時的に人工肛門を作るか、またはブジーを行い乳児期に根治術を行なう方法などが選択されます。中間位型、高位型では新生児期に人工肛門を作り、体重が6~7kgに達してから根治術を行ない、その後に人工肛門を閉鎖するのが一般的です。