眼窩底骨折再来
担当医師:椎葉 義人 助教
外傷(スポーツ、ケンカ等)が原因で起こる骨折で、眼球運動障害、複視、眼球陥凹、三叉神経障害の4つの症状を呈します。骨折の程度により、保存的治療と手術治療を分けております。手術は全身麻酔下で施行し、骨折の状態により、上顎洞バルーン留置(口腔内アプローチ)や骨膜移植(腓骨より骨膜採取)を併用し、小児から高齢者まで幅広く対応しております。症状の消失・軽減を目標に治療を行っておりますが、多くの症例で目標を達成しております。今後はさらなる良好な予後のため、より侵襲の少ない手術を目指しています。
涙道再来
担当医師:町田 繁樹 教授、鈴木 利根 教授
鼻涙管閉塞を伴った症例には涙嚢鼻腔吻合術(鼻外法)を施行し、90%以上で自覚症状の改善が得られています。軽度の涙小管閉塞および涙点閉鎖に関してはヌンチャクチューブ留置を施行します。涙道内を観察できる涙道・鼻腔内視鏡の導入を予定し、侵襲の少ない涙道手術を目指しています。
斜視・弱視再来
担当医師:林 麗如 助教
斜視は大きく非麻痺性と麻痺性2種類になります。非麻痺性斜視の治療については、小児と成人の方針が異なります。小児では両眼視機能の獲得を目標として、内斜視に対しては早期治療が望ましいと考えています。その治療には、乳児内斜視は早期の手術治療を行い、調節性内斜視は眼鏡矯正を方針としています。一方、間欠性外斜視は両眼視機能良好な症例が多いので、両眼視機能が確認できれば、基本的に観察しますが、整容的に希望があれば、手術治療を行います。成人の斜視手術については、整容的な目的が主な適応です。麻痺性斜視について、小児先天性麻痺性斜視では、生まれつき神経の障害あって自然回復は望めないので、手術治療が適応になります。筋肉が動けないので、他の動ける筋肉が手伝えるように手術します。一回の手術で目標が達成できない場合には、複数回の手術が必要となります。全方向に動けるようになるのは難しいため、正面を見たときに両眼で真っすぐに向けるようにします。成人の麻痺性斜視では、障害された神経が回復する可能性があるので、数か月間経過観察してから、回復がなければ手術適応となります。その間に、日常生活の支障が最小限になるように、プリズムメガネや、片眼部分遮蔽などを行っています。
屈折性弱視に対しては、眼鏡矯正が最も基本で有効な治療法です。不同視弱視では、眼鏡矯正に加え、健眼の遮閉治療も必要になります。幼児の視力発育は3,4歳まで最も速く、それ以降は遅くなるとされています。そのため、弱視治療は早期発見・早期治療が重要です。しかし、受診が遅れて5歳以降に治療を開始しても、視力が改善した症例を多数経験しています。
神経眼科再来
担当医師:鈴木 利根 教授
神経眼科疾患として、複視をきたす眼筋麻痺、視力・視野障害をきたす視神経疾患、さらに瞳孔障害を主に対象とします。白内障や網膜・硝子体疾患、緑内障などに比べて患者数は多くありませんが、脳神経外科や神経内科、耳鼻科領域とも関連する点では幅広い領域を含みます。生命予後を左右する疾患もあり、このような他科疾患についてのある程度の知識と、緑内障や網膜疾患等との鑑別にも熟知する必要があり、最終的には視野やOCTなどの眼科検査の他、MRIなどの画像検査や血液検査、生検による病理やDNA検査を駆使して診断に至ります。
治療として眼筋麻痺を例に挙げると、まず原因疾患の治療を他科とも連携して行います。次に複視解消のための対症療法としてプリズム眼鏡などの当科独自の光学的治療や、最新のボトックス注射による外眼筋治療、さらに従来からの眼筋手術を日帰りまたは短期入院で安心して受けられるようにしています。
前眼部再来
担当医師:武藤 哲也 講師
翼状片は、結膜が中央に向かって延びる病気で、外科的切除で治療します。再発しやすいことが難点であり、再発率を低下させるためにマイトマイシンCを使って切除を行います。角膜感染症では必要に応じ、抗菌剤、抗真菌剤および抗ウイルス剤を用いて治療を行います。また、前眼部解析装置(ペンタカム)を用いて、 隅角を精査し、隅角閉塞と判断した際には、白内障手術を行い、前眼部の状況を改善することもあります。この処置により、急性閉塞隅角症を生じることはなくなります。Vogt-小柳•原田病では、前眼部の形状を測定することで治療効果の指標ともしています。
水晶体再来
担当医師:林 振民 非常勤講師、仙田 翠 助教
クリアな水晶体は加齢や疾患に伴って混濁し、視力に影響する場合に白内障といいます。加齢性白内障の有病率は50歳代から徐々に増え、80歳代ではほとんどの人が発症しています。
加齢性白内障になる要因の一つ、酸化反応の研究を重なって白内障の予防や進行抑制の方法を探ってきました。しかし、現時点では、濁った水晶体を元のクリアな状態に戻すことはできませんので、白内障に対して手術を行います。小切開創から混濁した水晶体を超音波乳化吸引で取り除いて水晶体の代わりの役割をする眼内レンズを挿入します。光干渉眼軸長測定装置や、眼内レンズ度数計算、角膜形状分析装置などを用いて、正確に眼内レンズを選び、術後の視機能を最大限に発揮できるようにします。眼内レンズは単焦点と多焦点眼内レンズに分けられます。それぞれの見え方が異なります。単焦点眼内レンズは、一つの焦点にピントが会うために、はっきり見えるのは一定の距離にある物です。通常は遠くが見やすいように眼内レンズを選びますので、近用の眼鏡が必要になります。多焦点眼内レンズは、光が多焦点に分散するので、遠方と近方の物を見ることができます。しかし、見え方の鮮明さは単焦点眼内レンズに劣ります。多焦点眼内レンズについては、現在、倫理委員会に申請中です。また、角膜乱視については、白内障手術の際に乱視矯正眼内レンズ(トーリックレンズ)を挿入して、術後乱視の軽減を目指しています。
網膜硝子体・黄斑疾患再来
担当医師:町田 繁樹 教授、西村 智治 助教
確実な診断に基づいた適切な治療をモットーにして診療しています。光干渉断層計(OCT)、眼底造影なのでの画像診断装置を駆使して網膜の形態的変化を評価します。また、視野検査、微小視野検査、網膜電図(ERG)、局所ERGを使って網膜の機能評価を行っています。手軽に施行できる皮膚電極ERGを導入しています。形態ならびに機能面からのアプローチで多くの眼底疾患を正確に診断することができます。ぶどう膜炎の診断の際には全身検査のみならず、前房あるいは硝子体液中のサイトカインを測定し診断の一助としています。
治療面に関しては下記の二つ分けた我々の取り組みを解説いたします。
1. Medical retina:加齢黄斑変性および黄斑浮腫の多くの症例に対して抗VEGF療法を行っています。加齢黄斑変性で抗VEGF療法が効かない症例の場合は、抗VEGF療法と光線力学療法を組み合わせた併用療法を行います。加齢黄斑変性の脈絡膜新生血管の評価にOCT angioを応用しています。また、糖尿病網膜症の汎網膜光凝固の際には、パターンレーザーを導入しており、疼痛の少ない低侵襲の治療を心がけています。 後眼部型のベーチェット病については抗TNF-α抗体を用いた治療を行っています。
2. Surgical retina:裂孔原生網膜剥離、増殖糖尿病網膜症、硝子体出血、黄斑疾患に対して積極的に硝子体手術を施行しています。25Gシステムとwide-viewing systemを用いた低侵襲な手術を行っています。重症の増殖硝子体網膜症および増殖糖尿病網膜症については双手法による膜除去とシリコンオイルタンポナーを用いて、良好な網膜復位成績を得ています。黄斑疾患については27Gシステムで硝子体手術を行っています。角膜が高度に混濁した症例にも対応できるように、硝子体内視鏡の導入を予定しています。
緑内障再来
担当医師:町田 繁樹 教授、忍田 栄紀 講師
OCTを用いて視神経乳頭ならびに眼底の緑内障性変化を他覚的に評価しています。また、静的量的視野を定期的に行いトレンド解析で緑内障進行の有無を評価しています。また、微小視野計と黄斑局所ERGを組み合わせて、緑内障早期の視機能障害の検出に勤めています。
急性閉塞隅角緑内障発作に対しては、レーザー虹彩切開あるいは白内障手術を施行します。慢性閉塞隅角緑内障については、隅角癒着剥離術を1st choiceとしています。
開放隅角緑内障で眼圧がコントロールできない場合は、マイマイシンCを用いた線維柱帯切除術を行っています。輪部切開とblock sutureを組み合わせることで丈夫で長持ちする濾過胞形成を目指しています。硝子体手後の血管新生緑内障についてはバルベルトチューブシャント手術を施行し、良好な術後眼圧を得ています。
ロービジョン再来
担当医師:江口 万祐子 医師、視能訓練士:相馬 睦 副主任、杉谷 邦子、田中 佳子
視力低下や視野欠損、複視などの視機能障害が原因で、日常生活に困難を感じているすべての人を対象に、ロービジョンケア(=眼科リハビリテーション)を行います。
視機能の評価(身体障害者手帳に該当する否か)に始まり、視覚的補助具(ルーペ・単眼鏡・遮光眼鏡)の選定・処方、日常生活便利用品の紹介、白杖を用いた歩行訓練、ピアカウンセリング、就労・就学相談、福祉の利用案内・情報提供など生活全般にわたるケアにより、QOLの向上を目指しています。
一人一人のケアに時間がかかるために完全予約制とさせていただいておりますが、これまでに1000人以上のケアを行ってきた経験から、当院小児科や教育関係・福祉関係など外部専門施設との連携も図り、小児から高齢者まで多種多様なケースに対応できるようになっております。