Dのマークって中二病っぽくて
かっこよくないですか?

事件はそんな軽い一言から始まった。

毎月1度行われる企画会議。
ここでは、初期研修医の採用戦略について
様々な意見交換が行われる。

2017年12月、広報担当者とデザイナーから
センター長下田に向けて、
来年度の戦略について新たな提案が行なわれた。


「獨協のロゴを全面に押し出した
ゲーム調のウェブサイトを作りませんか?
教授をカード化したり、
ゲームマスターとして院長にも
出演いただければ絶対話題になりますよ」

斜め上のバカげた企画。
ブランドイメージが重要な大学病院で、
この様な企画が通るとも考えづらい。

ただ、広報担当者とデザイナーには確信があった。


「獨協であれば
   この企画は通る」

企画会議の間、終始無言を貫いていた
センター長の下田が最後に一言ポツリとつぶやいた。

「面白そうだ」

下田の一言により、
「Dの血族」のウェブサイトが誕生したのであった


従来の初期研修医採用サイトでは
ありえないコンセプトの
「Dの血族」のサイトは話題を呼び、
各種メディアに取り上げられた。

ホームページのPV数は公開前と比べて、
30倍にも伸びた。
PR効果は絶大だ。

肝心の初期研修医採用も本年度は
見事フルマッチングを果たし、
キャンペーンとしては成功だったと言えよう。


しかし、ここまでの道のりは
決して平坦ではなかった。

メインターゲットである医学生からは
「そこまでしなくても……」と
冷ややかな目で見られ、
院内の初期研修医からは
「友達に見られると恥ずかしいのでやめて下さい」と
反発を受けた。

更に、院内の関係者からも「ふざけている」と
批判の声が多数あがった。

その様な状況下でも、キャンペーンを続けた
下田の心境は計り知れない。


当時の心境を下田は次の様に語った。

「確かにお叱りの声を多数いただきましたが、同時によくやったと
賛辞の声も多くいただきました。院外からもお声をかけていただくことが増え、
かすかな手ごたえも感じていました。ですので、
あとは自分の直感と企画チームを
信じるしかないと思って継続をしました」

そして、下田はこう続けた。

「一方で、関係者の皆様方にご迷惑ならびに
ご心配をおかけしたことは事実ですので、
その件に関しましては心から謝罪をしたいと思います」

下田は言葉通り、謝罪の機会を作った。

誠に申し訳ございませんでした。

 





Dは帰ってくる


 

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